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魔法少女リリカルなのはマスカレード クロス元:仮面ライダーシリーズ(平成) ※改稿したものから順番にサブタイトルを変更して行きます。 最終更新:08/09/11 最終改稿:11/02/19 ACT.00「変わる世界」 改稿 ACT.01「始まりの夜、ビギンズナイト」 改稿 ACT.02「その力、仮面ライダー」 改稿 ACT.03「赤と黄色、ライダー二人」 改稿 ACT.04「何故!? 悪人ライダー」 改稿 ACT.05「謎の戦士」 改稿 ACT.06「愛惜の旋律」 改稿 ACT.07「開幕・転校生」 改稿 ACT.08「邂逅・交差する運命」前編 改稿 ACT.08「邂逅・交差する運命」後編 改稿 ACT.09「警告:カブト暴走中」前編 改稿 ACT.09「警告:カブト暴走中」中編 改稿 ACT.09「警告:カブト暴走中」後編 改稿 ACT.10「乱心!完全調和第三章」前編 改稿 ACT.10「乱心!完全調和第三章」後編 改稿 ACT.11「Try this Δform~トライディスデルタフォーム」 マスカレード11話 ACT.12「学校の怪談でG-3起動?」Aパート マスカレード12話A ACT.12「学校の怪談でG-3起動?」Bパート マスカレード12話B ACT.13「激突!なのはvsハイパーカブト!!」 マスカレード13話 ACT.14「たった一人の妹」前編 マスカレード14話 ACT.15「たった一人の妹」後編Aパート マスカレード15話A ACT.15「たった一人の妹」後編Bパート マスカレード15話B ACT.16「俺、参上!」 マスカレード16話 ACT.17「それぞれの傷」前編 マスカレード17-1話 ACT.18「それぞれの傷」中編 マスカレード17-2話 ACT.19「それぞれの傷」後編 マスカレード17-3話 ACT.20「FULL FORCE-ACTION」前編Aパート マスカレード20-1話 ACT.20「FULL FORCE-ACTION」前編Bパート マスカレード20-2話 仮面ライダークウガA’s ~おかえり~ クロス元:仮面ライダークウガ 最終更新:11/06/07 ※この作品はリリカルなのはと仮面ライダークウガの二次創作作品です。 「HERO SAGA」での設定や独自解釈、またはそれらを用いた二次設定が登場します。 こういった二次創作に嫌悪感を持つ方は、読まずに引き返す事を推奨します。 EPISODE.00 青空 EPISODE.01 転移 EPISODE.02 捕獲 EPISODE.03 邂逅 EPISODE.04 時空 EPISODE.05 家族 EPISODE.06 距離 EPISODE.07 暗雲 EPISODE.08 接近 EPISODE.09 戦士 EPISODE.10 変身 EPISODE.11 再戦 EPISODE.12 驚異 EPISODE.13 覚醒 EPISODE.14 恐怖 EPISODE.15 運命 EPISODE.16 岐路 EPISODE.17 憎悪 EPISODE.18 傀儡 EPISODE.19 約束 EPISODE.20 決意 EPISODE.21 母子 EPISODE.22 消失 EPISODE.23 侵食 EPISODE.24 異形 EPISODE.25 想出 宇宙の騎士リリカルBLADE クロス元:宇宙の騎士テッカマンブレード 最終更新:08/01/07 プロローグ 第1話「天駆ける超人」 第2話「赤い戦慄エビル」 第3話「お引越し、そして理由無き敵前逃亡」 第4話「ペガス発進!新たなる力、起動!」 第5話「復活!怒りのボルテッカ」 第6話「それは小さな願いなの(前編)」 第7話「それは小さな願いなの(後編)」 第8話「見捨てられた世界」 第9話「引き裂かれた過去」 仮面ライダーカブト クロス元:仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE 最終更新:07/12/27 プロローグ 1999 第一話 マスクドライダー 第二話 戦いの神 第三話 矢車 なの☆すた nanoha☆stars クロス元:らき☆すた プロローグ Episode 01「曖昧3年生」 Episode 02「癒し効果」 TOPページへ このページの先頭へ
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「……来ないね、ヴァッシュ」 「バイトが長引いてるのかなぁ。それにしても遅い気けど」 高町なのはとフェイト・テスタロッサの二人は、夕刻の登山道広場にて並んでベンチに腰掛けていた。 冬場という事もあり日が落ちる時刻も早い。 時間が経過するにつれ陽が落ち、周囲の気温も低くなっていく。 ホウと、吐いた息は純白に染め上がっていた。 寒気に包まれながら二人は待ち人の到来を待つ。 「なのは、ヴァッシュの話って何だと思う?」 「うーん、何なんだろ。大事な話だとは言ってたけど」 ヴァッシュから告げられた待ち合わせ。 彼の言う大事な話と一体何なのだろうか。フェイトにもなのはにも予想がつかない。 ただヴァッシュがあれだけ言うという事は、本当に大事な話なんだろう。 あれこれ思考してみながら、なのはは空を見上げる。 静かな赤焼けの空には、まだ夕刻だというのに真ん丸な満月が光っていた。 「でも、ヴァッシュがこういう事を言い出すのって珍しいね」 なのはに釣られて空へと視線を移しながら、フェイトがポツリと呟いた。 夕焼けの中、満月を見上げる二人の少女。 何処か幻想的で、とても平穏な光景がそこにはあった。 「フェイトちゃんもそう思う?」 にゃははと苦笑を浮かべながら、なのはもフェイトの言葉に同調する。 寧ろ普段は苦笑を浮かべられる側のなのはである。 僅かな呆れを含んだその苦笑は、なのはにすれば珍しい部類の表情であった。 「ああ見えて、ヴァッシュって余り人に悩みを打ち明けるタイプじゃないから。一人で抱え込んじゃう質だ」 フェイトもまた苦笑する。 悩み事を一人で抱え込み、誰も巻き込む事のないよう、誰にも心配を掛ける事のないよう、一人で解決しようとする。 まるで何処かの誰かを見ているようであった。 「ふふっ、フェイトちゃんと似てるかもね」 「それを言うなら、なのはにだって似てるよ。そっくりだ」 なまじ常人より力を持つばかりに、余り人を頼ろうとしない。 信頼してない訳ではなく、ただ巻き込みたくないから、そうする。 それは、二人の魔法少女とも何処か通じているようにも思えた。 言葉を交わして、肩を寄せ合って、似たもの通しの二人が笑顔を浮かべる。 「遅いね、ヴァッシュ」 「ねえ」 二人は顔を見合わせて笑い合いながら、ヴァッシュを待つ。 寒空の下を長時間待たされ、だがしかし、その言葉に辛辣な色はない。 時間がとても穏やかに過ぎていく。 寒空の彼方では、世界を照らす恒星が一日の役目を終えて地平へと沈んでいく。 一日がまた終わろうとしていた。 暖かく平穏な一日が、また終わる。 そして太陽が沈み、広場の街頭が音をたてて点灯したその時―――遠くから足音が聞こえてきた。 「ヴァッシュさん、遅いですよ」 と、なのはは頬を膨らませて、フェイトはそんななのはに苦笑しながら、足音のした方へと振り向く。 待ち人のようやくの到来かと思われた瞬間。 だがしかし、其処にいたのは二人にとって思いも寄らぬ人物達であった。 「シグ……ナム……」 「……ヴィータ、ちゃん……」 闇の書の守護騎士。 鉄槌の騎士と烈火の騎士が、其処にいた。 呆然とした表情で守護騎士達を見るなのは達に、守護騎士達もまた虚をつかれたように動きを止める。 この遭遇は守護騎士達にとっても予想の範囲外の事。 街灯に照らされる広場を、重い重い静寂が支配する。 予想外の出会いは両者から言葉を奪い去っていた。 沈黙の中、ギリという鈍い音が聞こえる。 歯を噛み締めた音。その音は烈火の騎士から届いたものであった。 直後、事態が急変する。 「はあああああああああああああ!!!」 咆哮と共に烈火の騎士が斬り掛かってきた。 ◇ 寒空の下ベンチに腰掛ける二人の魔法少女を見て、シグナムは思った。 ただ一言、裏切られた、と。 その結論は、ヴァッシュへの不信が積み重なって導き出されたものであった。 待ち合わせの場所にいた管理局の魔導師。 肝心の男の姿は何処にもなく、いるのは管理局の魔導師だけ。 あの男は自分達の事を管理局には伝えないと言っていた。 なのに何故、管理局の人間がこの場にいる? 何故、管理局の魔導師が待ち構えている? まるで、誘き出されたかのようだ。 大事な話があると嘘ぶき、待ち合わせの場所へと管理局の魔導師を待機させ、一網打尽とする。 そんな意図が、見え隠れする。 「はあああああああああああああ!!!」 だから、シグナムは激昂した。 はやてを救いたいとのたまいながら、結局は管理局に情報を流した男に対して。 あれだけの事をのたまいながら、結局ははやてを見捨てた男に対して。 世界の滅亡と主の救済、その選択を持ち掛けておいて、結局は自分達を裏切った男に対して。 シグナムの感情が、爆発する。 積もり積もった鬱憤をも巻き込んで爆発した感情は、既に理性で引き止めるものではなかった。 男に対する憤怒の感情は眼前の魔法少女達へとすり替わり、シグナムは行動を開始した。 レヴァンティンを起動させ、騎士甲冑を纏うシグナム。 一瞬の躊躇いもなく、対話の暇すら与えようとせず、シグナムは剣を振るった。 全力で地面を蹴り抜き、宿敵の魔導師との距離を詰め、レヴァンティンを横一閃に振り抜く。 「くうッ!」 唐突の襲撃に、だがしかしフェイトの防御はギリギリのところで間に合った。 右手を掲げて殆ど反射的に防御魔法を形成し、シグナムの刃を阻止する。 とはいえ、急場の防御魔法でシグナムの渾身の一撃は止められない。 シールド魔法を挟んで伝わる強大な剣圧に、フェイトの細躯が後方へと大きく弾かれた。 その身体が後方の森林へと激突する寸前、フェイトを抱きかかえたのはなのはであった。 バリアジャケットに身を包み、レイジングハートをアクセルモードで装備する。 「待って、話を聞いて下さい! 私達は……!」 「あの男に言われて来たのだろう! なら、交わす言葉などない! お前等は我らの敵だ!」 取りつく島もなく、シグナムは烈風の如く攻撃を仕掛けてくる。 その熾烈な攻撃は前回の戦闘時とはまるで別人のようなもの。 がむしゃらと言えば聞こえは悪いが、シグナムの剣術から繰り出される攻撃は疾風怒涛の勢いであった。 その攻撃は、ただ疾く、重い。 剣の矛先は、フェイトを庇うように立ったなのはへと向けられている。 「盾!」 掲げた桜色の防御魔法に、重い重い剣戟が突き刺さる。 充分な魔力を込めた盾だというのに、僅かに軋む様子が窺えた。 重い一撃であった。 シグナムを突き動かす感情が、なのはにも伝わる。 だが、なのはには理解しきれない。 何故、シグナムが此処までの感情を持って敵対するのか。 前回の戦闘から今回の間に、何があったのか。 疑問に覚えど、答えを見出すには判断材料が少な過ぎる。 「だりゃああああああああ!!」 「なのは!」 シグナムの猛攻に耐えるなのはに二つの声が掛かる。 絶叫と共に突撃してくる鉄槌の騎士に、臨戦態勢を整え戦線に介入する雷光の魔導師だ。 横合いからなのはに襲い掛かるヴィータを、フェイトの戦斧が食い止めていた。 なのはとフェイトが目を合わせて、一度頷き合う。 直後、なのはを守護していた防御壁が爆音と共に弾け飛んだ。 クロスレンジで戦闘していた四人を巻き上がった爆煙が包み込む。 「ヴィータちゃん、シグナムさん、話を聞いて。私はあなたとお話がしたいの!」 煙を切り裂いて宙に舞い、魔法少女達は守護騎士から距離を取る。 離した間合いを挟んで、なのはが言葉を飛ばした。 「うるせー! お前らに話す事は何もねえって、言ってんだろうが!」 だが、言葉は届かない。 願いの言葉はそれ以上の憤りを持って弾かれる。 何故ヴィータがそれだけの憤りを覚えているのか、なのはには分からない。 敵意が桁違いに高まっている。 その敵意の太源が、ヴァッシュ・ザ・スタンピードとの邂逅だという事をなのは達は知り得ない。 知り得ないからこそ、困惑する。 そして、なのは以上の困惑を覚えていたのはフェイトであった。 フェイトと相対しているシグナムは、ヴィータと比較しても段違いな程の激情を表出している。 前回までの冷徹な面持ちなど何処かに消え去っていた。 憤怒を顔に張り付かせ、怒りに肩を震わせている。 まるで別人の如く形相であった。 「シグナム、一体……」 「預けた決着は今しばらく後にしたかったが……すまんな、自分を抑えられそうにない!」 フェイトの問い掛けを遮るように、シグナムは動く。 次いでヴィータも、なのはへと急迫する。 ヴァッシュへの不信感が疑念を育て、謀られたとの想いを産む。 もしヴァッシュがこの場にいたのなら、幾らか話は違って来たのだろう。 同様にシグナム達の激怒から襲撃をされたとしても、ヴァッシュは必死に語る。 話し合おう、と。 話し合い、誰もが助かる道を探そう、と。 だが、もう遅い。 守護騎士達の不信は限界を越え、戦闘へと身体を突き動かす。 魔法少女と守護騎士が再び交差する。 本来ならば対話の道を歩む筈だった邂逅は、架け橋たるガンマンの不在により、激闘の舞台へと姿を変えた。 魔法少女は守護騎士達を止める為に武器を掲げ、守護騎士達は感情に身を任せて、そして己の使命の為に武器を振るう。 流転する場を止められる者など、もう居なかった。 ◇ 「始まったようだな」 薄暗の空を走る光線を眺めながら言葉を零す者がいた。 仮面の男。その片割れが空を見上げてポツリと呟く。 仮面の男の足元には、幾重ものバインドでがんじがらめにされたヴァッシュが転がっていた。 「良いのか? 管理局のデータにクラッキングを掛ければ発見を遅らせられるが」 もう一人の仮面の男が、言葉を紡ぐ。 その視線の先にはボンヤリと空を見上げるもう一人の男・ナイブズがいた。 ナイブズは仮面の男の言葉に顔を向けずに答える。 「必要ない。むしろ奴等に見ていて貰わねば困る」 視線すら合わせず、何の気なしに発せられた言葉だというのに、仮面の男達は思わず息を呑む。 百戦錬磨の経験によるものか、それとも獣特有の本能的なものなのか。 ともかく、仮面の男達はナイブズの脅威をひしひしと察知していた。 邂逅の時に見せ付けられた『力』。 そして、人類に対する異様なまでの憎悪。 仮面の男達もナイブズの危険性は理解している。 だが、その活動を止める事もできない。 敵対すれば、瞬きの間もなく殺害されると分かっているからだ。 自分達では敵わない。 いや、おそらく管理局の魔導師でも、ナイブズを打倒する事は不可能だろう。 現状が奇跡といっても良い程だ。 死者が一人も出ていない現状が。 「……そうか。なら、良いが」 現在は利害が一致から協力体制を取ってはいる。 だがしかし、ナイブズが人類を滅亡させる活動を始めた時、自分達は本当にナイブズと敵対できるのか。 自問するも答えは出ない。 眼前の男との敵対を、心の根っこの部分が拒絶する。 胸に巣くう感情の正体を、仮面の男達も理解できていた。 恐怖だ。 情けないとは、彼等自身も思う。 しかし、そんな上っ面の感情では抑えが効かない程に、恐怖は大きいものだった。 「お前達は手筈通りに行動しろ。それで、おそらく完成だ」 仮面の男達はナイブズの言葉にただ頷くだけであった。 利害は一致すると頭の片隅で言い訳をしながら、行動する。 心中の恐怖から逃げるかのように、仮面の男達は夜天の空に飛び出した。 ◇ 「うおおおおおおお!」 高町なのはとヴィータとの戦闘は膠着状態にあった。 果敢に突撃してくるヴィータに、なのはも得意な中・遠距離戦を展開する事ができない。 振るわれる鉄槌をレイジングハートで防ぐ。 レイジングハートの柄が火花と共に悲鳴を上げた。 「どうしても……話を聞かせては貰えないの?」 「うるせえ! 何も知らないお前が首を突っ込むんじゃねえ!」 交差するデバイスを挟んで、なのははヴィータへと語り掛ける。 返答は怒号で、ヴィータは渾身をもってグラーフアイゼンを振り抜いた。 なのはの身体が錐揉みを描いて、宙を舞う。 体制を崩したなのはに好機を見たヴィータは、更に攻め込もうと空を駆ける。 「レイジングハート!」 「なッ!?」 錐揉み状態にありながら、なのははヴィータを見失ってはいなかった。 螺旋を描く身体をコントロールし、無理矢理に砲撃の体制を取る。 大袈裟に吹き飛ばされわざと隙を見せ、そこに付け込んできたヴィータへと砲撃をぶちかます。 一連の動作は殆どフェイク。確実にヴィータへ砲撃を当てる為の布石であった。 『Divine Buster』 「シュート!」 相棒の言葉に、なのはが合わせて吼える。 同時に撃ち出されるのは桜色の奔流。 空気を呑み込む轟音と共に鮮やかな砲撃が、鉄槌の騎士へと迫っていく。 「なめんじゃッ……ねええええええ!」 視界を埋め尽くす桜色にも、対する鉄槌の騎士は怯まない。 迫る砲撃に対してシールド魔法を形成し、斜めに傾ける。 砲撃の奔流をいなす。 砲撃を正面から受け止めるのではなく斜めに受ける事で、流れのベクトルを変更。 桜色の奔流はヴィータから反れ、その後方の空間へと流れていった。 無茶とも取れる攻防の末に、ヴィータはなのはへの接近に成功する。 手中の鉄槌から空薬莢が二発飛び出す。 鉄槌が、形状を変えた。 「ラケーテン……ハンマーアアアアアアア!」 「レイジングハート!」 カートリッジを使用しての一撃に、レイジングハートもまたカートリッジの使用で応える。 魔法楯が掲げる右手から発生し、加速の付いた一撃を食い止めた。 鉄槌に備わるスパイクと、プロテクションとが火花を散らす。 「何も知らない……そう、私は何も知らないよ。ヴィータちゃんが何でそんなに怒っているかも、何でそんな辛そうな目をしてるのかも、私は知らない」 均衡の最中、なのはは口を動かす。 楯を掲げる右手に渾身の力を込めて、それでもヴィータに向けて言葉を投げる。 「伝えてくれなくちゃ、言葉にしてくれなくちゃ、分からない。何も言ってくれないんじゃ、伝わらないよ」 激烈な攻防とは反対に、なのはの声は静かで落ち着いたもの。 だが聞く者が聞けば、分かる。その言葉の奥底にて燃えたぎる感情を。 「私は知りたい。ヴィータちゃんが何でそんなに怒っているのか、辛そうな目をしているのか、私は知りたい」 なのはの瞳に光が灯る。 力強い輝きを放つ瞳に、歴戦の騎士が僅かに気圧される。 「だからお話を聞かせて貰うよ―――全力で!」 言葉を切ると同時に、なのはは右手を少しだけ傾けた。 右手の動きに同調して、なのはを守っていたプロテクションが斜めに傾げる。 グラーフアイゼンが、火花を散らしてプロテクションの表面を滑る。 何の事はない。ヴィータが先程なのはに行った事を、同様に行っただけだ。 鉄槌をいなし、その突き進むベクトルを変更させた。 激情に支配され判断力が低下したヴィータの、その裏をかいた一手。 ヴィータの体勢が、鉄槌に引っ張られ前につんのめる崩れる。 その鼻先に紅色の宝玉が突き付けられた。 「くそッ!」 高速移動魔法を発動させ、無理矢理に身体を動かしてヴィータはなのはから距離を取る。 視界の先では着々と発射シークエンスが進んでいるが、不思議と焦燥はなかった。 砲撃ならば先程、ギリギリではあったもののいなす事が出来た。 ならば、問題ない。 何度砲撃を撃たれようと、何度でも弾き飛ばす。 勝利を掴むまで何度だろうと、繰り返すだけだ。 そして、砲撃が放たれる。 数瞬前と同様に盾を斜めに突き出し、衝撃に身構えるヴィータ。 桜色の光と紅色の盾とが、ぶつかり合う。 「なっ……!?」 だが、此処でヴィータにとって完全に予想外の事が発生する。 砲撃の威力が先刻のものと段違いなのだ。 受ける事は勿論、反らす事すら叶わない。 ヴィータを守る唯一の防壁に、一瞬で亀裂が走っていく。 「てめぇ……ッ!」 先程の一撃はなんだったのか、とヴィータの脳裏に疑念が湧く。 同様の砲撃魔法、カートリッジの追加もない。だというのにこれだけの威力の差。 ヴィータは知らない。 先の一撃が、対話を優先させての一撃だという事を。 今回の一撃が、撃破を優先させての一撃だという事を。 だからこその、桁違いの威力差。 ヴィータを守るシールド魔法が、音を立てて粉砕される。 声を上げる暇もない。 ヴィータの身体が桜色の奔流に呑み込まれていった。 ―――が、どういう訳かヴィータを呑み込んで直ぐに、砲撃の魔力放出が止まる。 魔力の奔流に包み込まれていたのは一秒にも満たない僅かな時間。 身体中が痛みに悲鳴を上げるが、戦闘不能に陥る程ではなかった。 「え……」 呆然の声を上げたのはなのはであった。 話を聞く為に、話を聞かせて貰う為に、放った砲撃。 撃破するつもりで放った全力全開の一撃。 撃破の末の対話を掴む為の、全力全開の一撃であった。 その一撃が無惨に宙へと無惨する。 ヴィータを撃破するには至らず、僅かな照射で砲撃が消え去った。 何で、となのは思わずレイジングハートを見る。 魔力が切れた訳ではない。 発射シークエンスにも問題はなかった。 何故砲撃は中断されたのか、純粋な疑問になのはは手中の相棒を見る。 見て、驚愕すると同時に、理解した。 砲撃が中断された、その理由を。 レイジングハートが、切断されていた。 柄部とレイジングハートの本体たる宝玉とが切り離され、宝玉が重力に引かれ落下している。 僅かな感触もなかった。 斬り取られた瞬間も分からない。 砲撃が阻止された理由は分かれど、また新たな疑問が脳裏を埋め尽くす。 何が起きたのか、ただその疑問がなのはの思考を支配した。 相棒の不在に、飛行魔法の維持すら困難となる。 崩れるバランスの中で、落下中のレイジングハートの元へと強引に駆けるなのは。 墜落する直前でレイジングハートを掴み取る。 魔力を込めると共にレイジングハートの修復機能が発動し、元のアクセルモードへと戻る。 体勢も何とか立て直す事ができた。 「何をしている」 声が、響き渡る。 ただポツリと呟かれただけの言葉が、轟音鳴り止まぬ戦場を駆け抜け、二人の動きを止める。 なのはは警戒に満ちた表情で、ヴィータは驚愕に満ちた表情で、声のした方へ振り向く。 其処には、男が立ち尽くしていた。 「何でお前がここにいんだよ……ナイブズ!」 闇夜の中にポツンと、白い点がある。 ライダースーツのような、身体に張り付いた真っ白な服を纏った男。 刈り上げられた短髪は薄い金色に染められている。 なのはは、男の顔に覚えがあった。 映像記録の中にて一騎当千の活躍を見せていた正体不明の敵。 アンノウンがそこにいた。 「少し用があって近場にいた。お前は相も変わらずの苦戦か、ヴィータ」 アンノウン―――ナイブズが、口を開く。 圧倒的な存在感であった。 喉が干上がり、視線は固定される。 レイジングハートを握る腕にも、知らず知らずの内に力が籠もった。 この男は何者なのだろか……、なのはは警戒を崩さずに男を見る。 「……うるせーよ」 「まぁ良い。せっかく通りかかったんだ、力を貸してやる。こいつの相手は俺に任せろ。お前はシグナムの助けに行け」 ナイブズは、まるで買い物でも任されたかのような気楽さで、なのはの相手を引き受ける。 その様子に気負いと云ったものは微塵も感じ取れない。 言葉一つで、管理局エースとの対戦を選択した。 「……殺すなよ?」 「善処する。それよりシグナムを任せたぞ。奴は冷静さを失っている」 僅かな逡巡を見せたものの、ヴィータも戦線を離脱する。 ナイブズの『力』はヴィータも認めていた。 高町なのはを圧倒する事も分かっている。 だからこその、忠告。 主の命を守る為の、主の道を穢さない為の、忠告であった。 「待って、ヴィータちゃん!」 離脱する鉄槌の騎士に声を掛けるも、ヴィータはチラリと視線を向けるだけであった。 ヴィータの瞳は敵に向けるものだというのに、心配気に揺れていた。 その瞳が意味する事に、なのはは気付かない。いや、気付けないというのが正解か。 なのはの視界の内で、ヴィータの姿が見る見る小さくなっていく。 遠方にて激突し合う黄色と紫色の光の最中に、赤色の光が交わっていった。 ヴィータを追跡する事はできない。 眼前に立ち塞がる男がそれを許さないだろう。 焦燥を押し殺して、なのははナイブズと相対した。 「あなたは、何が目的でヴィータちゃん達に協力するんですか?」 問い掛けに対するナイブズの返答は熾烈極まるものであった。 ナイブズは無言で左腕を掲げた。 掲げた左腕が白色に変化し、十枚程の刃と化す。 刃の横幅は、凡そ人の胴体と同等かそれ以上。 余りに巨大な刃の数々が、一瞬で男の左腕から湧き上がる。 異様な光景になのはは息を呑んだ。 人一人を殺すには余りに大袈裟な凶器が、なのはを狙っていた。 其処からは無言の戦闘であった。 ナイブズはなのはと会話をするつもりもなく、なのはは口を開く余裕すらない。 上下左右から覆い尽くすように迫る巨大な刃の数々に、なのはは己の全身全霊を賭けて、回避を行っていく。 全方位から迫る刃の数々は、まるで徐々に閉じていく巨獣の口の様。 なのはは、生きながらに咀嚼される獲物の気分を味わった。 『Accel Fin』 旋回、宙返り、高速移動、緩急を付けてのフェイントと、なのはは持てる全ての回避行動を施行して、命を繋いだ。 巨大な刃が、皮膚から僅か数センチの所を通過する。 掠めた刃が、堅牢なバリアジャケットをまるで紙切れのように切り裂く。 肌が粟立つ。 今まで感じた事のない程の巨大な『死』の感覚を、なのはは感じていた。 数分の回避運動の末に、攻撃が止む。 バリアジャケットの端々が切り裂かれ、身体の至る所に浅い切り傷を負いながらも、なのはは猛獣の咀嚼から生還した。 ナイブズとの距離は、凡そ1キロ程離れてしまっていた。 逃げ惑う中で知らずの内に離れていったのだろう。 空の彼方で豆粒大の大きさになったナイブズを見て、なのはは思わず安堵を覚える。 そんななのはを、ナイブズは遠方の空から見詰めていた。 プラントの翼手を使用しての攻撃など、彼からすれば殆どお遊びレベル。児戯に等しい攻撃である。 だが、その児戯に等しい攻撃から生還した人間など、百五十年の人生で二人しか見た事がない。 成る程、流石は次元を統べる管理局の尖兵といったところか。 それ相応の実力は有しているのだろう。 再びナイブズの左腕が動く。 先程同様に、なのはへと殺到する刃。 刃は1キロという距離を一瞬で埋め、四方八方からなのはを囲う。 なのはもまた、足首に備わった桜色の羽根を羽ばたかせて加速する。 迫る刃からまた逃げ回ろうと動いたところで、だがしかし刃が唐突に動きを変える。 視界を囲む刃の数々が、更なる拡散を見せたのだ。 木々が枝分かれするかのように刃の先端が幾重にも分裂し、それぞれが独自の動きを取りながらなのはを穿たんとする。 さしもの、なのはも反応しきれない。 身を捩り、最後の最後まで回避運動を取るが、足掻きに終わった。 避けきれなかった四本の刃が、なのはの四肢を貫通する。 プラントの刃が切れ味を前にバリアジャケットは本来の役目を果たせない。 リアクターパージすら発動する事が出来ず、刃に切り裂かれる。 経験した事のない激痛が、なのはを襲った。 「っぐ、あああああああああああああああああ!」 声が、止まらない。 痛覚が意識を支配し、精神を汚していく。 貫通した刃に四肢が固定され、動く事すら許容されない。 細刃に両手両足を拘束されたなのはの姿は、まるで張り付けにされた罪人のようであった。 「あく……せる……」 だが、なのはの心は折れない。 貫通する右腕で、それでも相棒たるレイジングハートを握り締める。 なけなしの集中力で必死に魔力を練り、射撃魔法を発動させる。 精神すら削る未体験の激痛に、流れ止まらない血の喪失感に、それでも不屈の闘志は輝きを止めない。 足掻きにも到らぬ反撃をしようと試みる。 そんななのはの姿に、ナイブズは無表情を貫く。 光り輝く不屈の闘志を前にして、ナイブズが心を揺るがす事は、一瞬たりともなかった。 決死の想いで魔力を操るなのはへ、ナイブズは冷酷に冷徹に終焉を与えた。 プラントが真なる力―――『門』を開く。 視認すら不可能な、極小規模の『門』。 ミクロ単位の大きさで発動された『門』が、『持ってくる力』を引き出しエネルギーとして爆発させる。 エネルギーは指向性を以て、1キロ先のなのはへと殺到し、その身体に直撃した。 レイジングハートが緊急防御として発動させたプロテクションは、飴細工の如く砕け散る。 音すら消えて、なのはの身体が横っ飛びに吹き飛んだ。 加速魔法すら超越する勢いで、なのはは山あいへと墜落する。 十何本の木々をへし折り、地面を抉り飛ばし、ようやくなのはの身体が進行を止めた。 完全に意識は消失し、頭が力無く垂れる。 ここに魔法少女の完全敗北が決定付けられ―――そして、終わりの始まるを告げる材料が取り揃った。 ◇ 「よう、ヴァッシュ。始めようぜ、終わりの始まりを」 ボロボロとなった魔法少女を肩に担いで、ナイブズは始まりの場所へと舞い戻っていた。 全身をバインドでがんじがらめにされ、地面に転がるヴァッシュの近くへと魔法少女を投げる。 どしゃ、という鈍い音と共に、魔法少女が地面を転がる。 魔法少女が、ヴァッシュが、言葉にならぬ声を漏らす。 薄ぼんやりとではあるものの、辛うじて意識はあるようだった。 とはいえ、殆ど意識は混濁しているだろうが。 ナイブズはヴァッシュの側で膝立ちとなる。 左腕が、掲げられた。 「物覚えの悪いお前にもう一度教えてやるよ。俺達の『力』を、人間の醜悪さを」 掲げた左腕で、ヴァッシュの顔に触れる。 その顔を隠すように、覆う。 ヴァッシュが僅かに身を捩った。 それが彼に可能な最後の抵抗であった。 「見せつけるんだ、俺の、俺達の『力』を」 ナイブズの左腕が、光る。 それに呼応するように、ヴァッシュの右腕も。 始まりは灯火の様な淡い光。 だが、光量は瞬く間に膨張していき、照らすものを増やしていく。 場にいるヴァッシュ達を。 暗闇の森林を。 桜台そのものを。 光が、満たしていく。 白色の、強烈で暴力的な光。 光は加速度的に輝きを増加させていき、全てを覆い尽くす。 「人間共に、見せ付けろ!」 そして、終わりの始まりが、始まった。 白色が、世界を覆い尽くした。 ◇ 朦朧とする意識の中、なのははその光景を見ていた。 視界に溢れる痛い程の白色が、世界を染め上げる、その光景。 朧気な視界を動かす。 なのははの視線は無意識の内に、白色の極光が発生源へと向けられていた。 不意に、なのはは感じた。 身体を支配する脱力感を押して、心底から噴出するは怖気。 見てはいけない。 これ以上、そちらに目を向けてはいけない。 心が、本能が、叫んでいた。 でも、意志に反して瞳が動く。 ―――駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ、 ぼやける視界が其処にいる何かを捉えた。 白色の光の中、横たわる何かを。 ―――見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな、見るな それは白色の中でも目立つ赤色であった。 赤色の布が、白色の轟風を受けて千切れんばかりに靡いていた。 ―――駄目だ、見るな、駄目だ、見るな、駄目だ、見るな、駄目だ、駄目だ、見るな、駄目だ、見るな、駄目だ、見るな、駄目だ、見るな、駄目だ 視線が、動く。 靡く赤色を追って、視線が上方に動く。 ―――今、 そして、 ―――『彼』を そして、 ―――見ては、 そして、 ―――いけない 見た。 赤色から生える、天使の如く右腕を。 その右腕が生えた『男の姿』を。 『ヴァッシュ・ザ・スタンピードの姿』を、見てしまった。 「――――――――――――――――――ッッッ!!!?」 高町なのはは声にならない絶叫を上げて、意識を失った。 白色が世界を震撼させる。 星々が輝く夜天を、人々が暮らす海鳴市を、世界を隔てる次元をも、震撼させる。 人々は見た。 世界を揺らす閃光に、遙か天高くへと伸びる光線。 そして、天に聳える月を蹂躙する光球を。 物理的に、精神的に、それは世界を震撼させた。 こうして平穏な日々は終焉を告げ、物語の終わりが始まった。 二人の人外と、魔法少女と、闇の書が描く物語。 その終わりは、この瞬間を境にして始まった―――。 前へ 目次へ 次へ
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リリカル魂(仮) プロローグ メダロット。それは、テクノロジーが生み出した全く新しいロボットである。 ティンペットと呼ばれる基本フレームに人工知能メダルを搭載、 さらに多種にわたるパーツを組み合わせることによって、 無限の能力を引き出すことができるのだ! おみくじ町のとある公園、子供たちの声と射撃音が聞こえる。 「メタビー、サブマシンガン!!」 ズガガガガガガガガッ! 『頭部パーツ、ダメージ100。機能停止』 腕時計から発せられる電子的な音声とともに、シアンドッグは糸が切れたように ばたりと倒れる。 と同時に、背中から『キュピンッ』と音を立てて何か光るものが飛び出した。 「あぁっ、シアンドッグ!」 少年がボロボロになった相棒へ急いで駆け寄る。心底心配そうな面持ちだ。 「いよっしゃあ!! またオレたちの勝ちだな」 「ってかイワノイ、お前もパーツの組み合わせ考えろよな。 サルメダルと射撃パーツは相性が悪いってのに」 腰に手をあてて満足げに勝ち誇っているのはメタビー。 ボディは全体的に明銅色で、右腕には単装の、左には二連装の銃身を装備している。 そして頭部には一対の大型バレルを備えたツノ。 一見するとカブトムシを思わせるフォルムだ。 そして、呆れ顔でアドバイスをしているのはイッキ。 頭のチョンマゲが特徴的な、メダロット大好き少年(小3)である。 「うるさいっ! 誰に何と言われようと、パーツを換えるつもりはないね。 俺はこのシアンドッグが好きなんだ!」 シアンドッグのメンテをしていたイワノイは、説教をタレるイッキに言い返した。 髪をデー○ン閣下よろしくカッチリ立てたヘアスタイルの、ややツリ目な少年だ。 いったい何を使えばそこまでソリッドに立ち上がるのか、作者に問いただしたい。 「まぁ、前よりは射撃の精度も上がってきてはいるけどな。 回避のタイミングとマスターの指示がまだまだってとこだな~」 メタビーのダメ出しにイワノイは反論しようとしたが、 言われたことはほぼ的を得ているため、歯軋りをするしかない。 「ほい、お前のメダル。確かにパーツ自体は性能良いけどさぁ、 負けてばかりじゃお前の相棒もいつかグレちまうぜ?」 イッキは落ちていたサルメダルを拾って手渡す。 「へん!余計なお世話だ」とか言いながらイワノイは乱暴に受け取った。そこへ―― 「あ、いたいた。ふーん、この様子だといつもどおりみたいね」 「イワノイ、また負けたのかい!? 情けないね~まったく!」 声がする方向へ振り向くと、 そこに2人の少女と1人の少年が近づいてくるところだった。 「あらら~、シアンドッグもボロボロじゃない!イッキ、手加減してやんなかったの?」 「ロボトルに手加減などない! メダロッターなら知恵と勇気で勝負ってもんだろアリカ」 「何よそれ?ワケわかんないわ・・・・」 目を炎にしながら熱く語るイッキをジト目で見るのは、 今どき珍しいオーバーオールを着ている少女、アリカ。 イッキとは幼馴染&お隣さんであり、幼少時代からの腐れ縁である。 「イワノイ。あんた、また今度負けでもしたら本気でスクリューズから除名するよ!!」 「ひぇええ~、オヤビンそれだけはー!」 あちらでイワノイに激を飛ばしているのはキクヒメ。 ウェーブのかかった茶髪、首元に下げたサングラス、 パンツルックの服装・・・・と、男っぽい格好をした女の子である。 その横でキクヒメの付き添いのように居るのはカガミヤマ。 少々ポッチャリしている少年で、どうやら物言いは少ないようだ。 ちなみにスクリューズとは、キクヒメを頭にイワノイ・カガミヤマの3人で構成された 悪ガキグループである。 名前の由来はお酒の『スクリュードライバー』から来ているとか何とか・・・・ 「まぁいい、かわいい子分の仇討ちだ。あたしとも勝負しなイッキ!」 さすがはリーダーとでも言うべきか、キクヒメがリベンジを申し出る。 「お、オヤビン・・・・一生ついて行きやす!!」 キラキラした目で自分のリーダーを崇めているイワノイ。 連戦はちょっとキツイんだけどな~とかイッキは考えていたが、 「上等だ、連戦連勝で返り討ちにしてやるぜ!」 とかメタビーがヤル気満々で言い返したもんだから、もう取り返しがつかない。 「ま、いいか。相手になるぜ」 「いい気になってんじゃないよ!メダロット、転送!!」 キクヒメの腕時計・メダロッチから閃光が走り、メダロットが転送される。 赤いボディに愛くるしい大きな目、特徴的な耳と尻尾のあるネコ型メダロットだ。 『合意と見てよろしいですね?』 どこからともなく声が聞こえる。メダロッターなら必ず聞き覚えのある、あの声。 ズバーーーーーッ!!! 地中から土を舞い上げ、現れたアノ人とは・・・・ 『Mr.うるち!!?』 「暖かいご歓迎ありがとうございます! 只今この戦いは真剣ロボトルと認定されました。よってこのMr.うるちが レフェリーを務めさせていただきます!」 「誰も歓迎なんてしてないわよ・・・?」 うるちにさりげなく突っ込みを入れるアリカ。 なるほど鋭いな、さすがは未来のジャーナリスト。 「こ、細かいことはどうでもよろしいのです! ルールは簡単、互いのメダロットを戦わせ、先に機能停止させた方が勝ちです。 よろしいですか~?」 「おうっ!!」 「いつでもかかってきな!」 「それでは、ロボトルぅ~~・・・フ ァ イ ト ぉ ! ! !」 カンッ! ゴングが鳴り響いた。誰が鳴らしたのかは突っ込まないで頂けると幸いである。 「ペッパーキャット、速攻で勝負をつけるよ!」 「了解ですおやびん!」 戦闘開始と同時に、ペッパーキャットは持ち前のスピードでメタビーに迫る。 「メタビー、相手の足元を狙え!動きを止めるんだ!」 「分かった!」 狙いを定めてサブマシンガンを連射する。が、 ペッパーキャットはネコ並みの俊敏性で弾幕をジグザグにすり抜ける。 「懐に飛び込んでライトジャブ!」 「はい!」 右腕パーツ・ライトジャブに紫電をまとわせ、メダビーに飛びかかった。 「バックステップでかわせ!!」 間一髪で後ろに飛び退き、電撃を回避するメタビー。 しかし、接近戦においては格闘型の相手のほうが上手だった。 「次!ライトブローだよ!」 先ほどより一回り大きな電撃がキャットの左手から発生する。 左腕パーツ・ライトブロー。威力が大きい分、右より攻撃スピードは劣るが バックステップから体勢を立て直せていないメタビーに当てるには十分だった。 バ チ チ チ チ チ ッ ! 「ぐわあぁぁあっ!」 「メタビー!!」 横殴り気味のブローはメタビーの頭にヒット、そのままの勢いでぶっ飛ばされる。 『頭部パーツ、ダメージ52』 「っく、痛って~・・・・」 どこかの回路が軽くショートしたのか、視界に砂嵐が混じっては消える。 「さすがオヤビン、その調子!」 イワノイが歓声を上げ、カガミヤマも『うんうん』と頷いている。 「おい大丈夫か!?」 「あぁ・・・・ちょっと油断しちまったな」 心配するイッキに、かろうじて余裕を含めた返事をするメタビー。 本当はモニターの調子が思わしくないのだが、そのことはあえて言わなかった。 一応の安心をした後、イッキはこの後どうするかを思案する。 (あの機動性じゃ、おそらくリボルバーもそう当たらないはず。 せめて動きを鈍らせられれば・・・・そうだ!) 「メタビー、反応弾だ!」 「何ぃ?アレが当たると思ってんのか!?」 「いいから!発射機能はまだ大丈夫なんだろ?」 『反応弾』。メタビーの必殺武器とも言える大火力の武装。 確かに当てればほぼ一撃だろうが、問題はその『当たるかどうか』なのだ。 しかし、イッキの顔は何か自信と確信に満ちている。 イッキの様子に訝しがりながらも、メタビーはペッパーキャットに照準を合わせ、 「いっけぇ!」 「ハンノウダン!!」 ドシュゥッ! 大型バレルから2発のミサイルが黒煙をまとって飛び出し、 真っすぐにペッパーキャットへ突き進んでいく。 「ほーぅ、お得意の反応弾かい?ま、当たるつもりはないけどねぇ」 目前1メートルまで迫った刹那、キャットは垂直に跳び反応弾を回避。 いかに火力がある武器といえども、避けられてしまっては意味はない。 「残念だったねぇ~。さて、そろそろ仕留めるよ!」 「はいっおやび/ドゴォォォン!!」 突如、爆炎が立ち上った。背後からの爆風で吹き飛ぶペッパーキャット。 そこに、 「メタビー、リボルバー連射!」 「もらった!!」 ガッチリと右腕を構えたメタビーは照準を合わせ、連撃を放った。 「あ痛っ!」 「ペッパーキャット!!」 『脚部パーツ、ダメージ53』 脚部にダメージを受け、思わず膝をつくペッパーキャット。 「いよっしゃぁー!!」 「なーるほど、考えたじゃねぇかよ」 わざと相手の背後付近に着弾させて爆風を起こし、バランスを崩した隙に攻撃する。 ――イッキの考えたアイデアは見事に成功した。 「へぇー、やるじゃないイッキ」 観戦していたアリカも、イッキの戦法に少し感心する。 「やってくれるねぇ。次はこうはいかないよ」 「ああ、ここからが本当の勝負だぜ!」 互いに向き直り、改めて攻撃タイミングを見測るキクヒメとイッキ。 先に動いたのはキクヒメだった。 「反応弾はもう当たらないよ。いいね?ペッパーキャット!」 「了解おやびん!油断はナシです」 ステップを利かせてメタビーに迫る。照準を絞らせないつもりだ。 しかし、相手の動きを見てイッキは何かに気付いた。 (脚部パーツにダメージがあるからか?さっきよりもスピードが少し落ちてる) よくよく見ると、若干だがキャットの動きにスキが生じている。 「脚が弱ってるなら、こっちの攻撃も当たりやすくなってるはず。メタビー!」 イッキの呼びかけに、 「分かってるさ。オレ様の射撃の腕をなめんなよ」 威勢よく左手のサブマシンガンを構えるメタビー。 その間にも、右に左に動きながらペッパーキャットは距離を詰めてくる。 と、やはり脚部の異常か、一瞬だけステップにブレが生じた。そこを見逃さないイッキ。 「今だ!」 「くらえっ・・・・う!?」 まさに決定打を撃とうとした矢先、メタビーのモニターが再び砂嵐に襲われる。 視界の定まらない中で闇雲に撃ったマシンガンは、相手に当たることはなく・・・・ ガガガガッ――ドバァー!! 「んな?何やってんだお前ー!?」 公園の中心にある噴水の土台に命中。生じた亀裂から、大量の水が噴き出す。 そしてその水は、 「うわぁっ冷てー!!」 「な ん で 俺 ま で ~ ! ?」 噴水を破壊したメタビーと、すぐ隣にいたイッキへと降り注いだ。 「何やってるんでしょう?メタビー達」 突然の相手の自滅に、唖然とするペッパーキャット。 「あ~・・・・よく分からんが、とにかくチャンスだ!ライトジャブ!」 「はい!」 キクヒメも同様に呆れていたが、これ見よがしと攻勢に出る。 「げぇ~、びしょびしょだ・・・」 濡れそぼった服の感触にぼやくイッキ。と、 「おいイッキ!ボヤボヤしてんな!」 キャットの接近にいち早く気付いたメタビーが警告を発する。 「や、やばいぞ!こんなに濡れてるときに電撃なんか食らったら・・・・」 なんて考えている間に、目前まで迫る赤い猫。右手には紫電をまとっている。 「とにかく回避だ、走れメタビー!!」 「よしっ・・・・っておわぁー!」 べちゃっ 大量の水でぬかるんだ地面に脚を取られ、盛大にコケるメタビー。 「決まりだねぇ。とどめだよ!」 キクヒメの勝利宣言と同時、ライトジャブがメタビーを捉えた。 ちょっと待てよ? 大量の水でメタビーとイッキはびしょ濡れ。しかも地面も水浸し。 ということは―― 「「あぎゃぁぁぁぁあ!!」」 バリビリビリ!! 二人そろって感電していたりするわけで。 「えっ?ちょ、イッキ!?」 アリカが思わず叫ぶ。と、 ド ガ ァ ァ ァ ン ! ! ! 何故か派手な爆発が起き、辺りは爆煙に包まれる。 やがて煙が晴れ、黒コゲになったペッパーキャット、そしてイッキとメタビーが―― イッキとメタビーが、いなかった。 『え・・・・?』 その場の一同は、ただただ呆然とするだけだった。 「・・・・とりあえず、この試合は没収試合とさせていただきま~す~」 所変わって、ここは海鳴町。とある民家の子ども部屋。 「んーっ、宿題終わり~!」 週末用に出された宿題をやっつけ、なのはは大きく伸びをした。 『Good job. Master(お疲れ様です。マスター)』 机の上に置いてある赤い宝玉が労いの言葉をかける。 「ありがと、レイジングハート。さてとっ、夕飯まで何しようかな~」 現在時刻は午後4時30分ほど。涼しい時間帯を使って宿題を終わらせたなのはだが、 これから特に何をするという用事はなかった。すると、 『How will be a walk? It is good a change after study. (散歩はいかがでしょう。勉強後の良い気分転換になると思います)』 と、レイジングハートが提案する。 「ん、そうだね。さっきの問題解くのにけっこー頭使っちゃったし」 パートナーを首にさげて、なのはは家を出た。 またまた所変わって、ここは時空管理局所属の巡航艦、アースラ内ブリッジ。 艦長のリンディ・ハラオウンは、キャプテンシートに座っていた。 「ここのところ大きな異常はなし。いいことねぇ~」 と言って、日本茶の淹れてある湯飲みに手を伸ばす。 そのまま飲むのかと思いきや。角砂糖を2個、さらにミルクをたっぷり注いだ。 そしてよくかき混ぜ、一口。 「うん、美味しい」 『本当に美味しいのか?』と突っ込みたくなるが、そこは暗黙の了解というやつで。 「あ、艦長!お疲れさまですっ」 「あら、エイミィ早いわね。もっとゆっくりしてても良かったのよ?」 ブリッジのドアが開き、入ってきたのはエイミィ・リミエッタ。 ショートカットに1本ハネた癖っ毛(?)、活発そうな顔立ちの少女だ。 「ご心配なく!ちゃーんと休憩はしてきましたから。それに・・・・」 と、彼女はそこで言葉を切って顔を引き締めた。 「それに?」 急に真面目な表情になったエイミィに、リンディは疑問符を浮かべる。 「何だか落ち着かないんですよ。オペレータとしての勘っていうか――」 優秀な管制官である彼女の経験と勘が、何かを訴えていた。 「こういう『異常なし』って日が続いてると、『唐突に何かが起こる』って」 「ぇ・・・・」 一時の静寂がブリッジを包んだ。 「――なーんちゃって!やだなぁ艦長、冗談ですよジョーダン!」 自分の言葉を間に受けてしまったらしい艦長に、 エイミィは『あははは』と苦笑いながら前言を撤回。したつもりだったが、 ヴィー!! ヴィー!! 突如としてアースラの管制システムが異常を感知した。 「ありゃ、当たっちゃった?」 タラ~ッと、エイミィの頬に一筋の汗が流れた。 目次へ 次へ
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CHARACTER PROFILE5 ヴェイロン(Veyron) 暴力と強さを信条とする強力にして凶暴な戦士 都筑真紀 悪キャラなりのヒーローっぽく、というようなお願いをしたような記憶があります。脚本上ではヴェイ兄はとても書きやすい人です。 緋賀ゆかり 今までの「なのは」キャラにはいなかったタイプ。自分としても描かなかったタイプのキャラで、やっと描き慣れてきた。 原案ラフから等身を上げたので。パーツのディテールなど腰まわりがけっこう変わりました。 CHARACTER PROFILE6 サイファー(Cypha) 剣の道に生きるフッケバイン最強の剣士 都筑真紀 クール系で剣士系ということで、シグナムとキャラがかぶりやすかったりですが、 緋賀先生の手ににかかればこれこのとおり。なにげに身内にやさしいお姉さんだったりします。 緋賀ゆかり 全体的なイメージは都筑先生からの原案ラフどおりですが、髪は動いたときに動きがわかりやすく見えるように バリバリしている感じに、出るところは出したりして(笑)、自分なりにふくらませました。 CHARACTER PROFILE7 フォルティス(Fortis) フッケバインの参謀格を務める頭脳派のイケメン 都筑真紀 説明役とさりげない嘘に定評のあるヤングメンです。原案時に眼鏡かけさせようと思ってやめた記憶が。 メンバーとしての役割や能力が明らかになるのはまだこれから。 緋賀ゆかり キャラデザイン先行の他メンバーに対して、シナリオをいただいた後だったのでイメージはしやすかったです。 いろいろ説明してくれる唯一の存在で、フッケバインを知るうえで“入口”になるキャラでは。 CHARACTER PROFILE8 アルナージ(Arnage) 隠密行動が専門の陽気なムードメーカー 都筑真紀 「海賊一家の陽気な子」的なイメージでした。 ちなみにトーマたちの捕獲で使ったロープはディバイダーやそのパーツではなく、単なるアイテムです。 ディバイダーは別のが。 緋賀ゆかり 本当に描きやすいキャラクター。ファッションは案外、細かいところでオシャレです。 サイファーを助けるシーンがあるように、男勝りだけど細かいところに気を遣う女の子なんだな、と思っています。
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悪を断つ剣 夜の森は暗い。 微かに漏れる月明かりはあまりに頼りなく、枝の濃い地域はほぼ完全な無明状態となる。 そこを歩くのは、左目に傷を持った男――記憶喪失を騙る、通称Dボゥイ。 その手に握っているのは、何やら一振りの奇妙な日本刀。 本来刃である箇所が峰であり、峰である箇所に刃があるのだ。 本当にこんなものが使えるのか? 最初はそうも思ったのだが、どうやらこれは峰部分の強度もかなりのものらしい。 …本当に何故繊細な日本刀がそんなに丈夫なのかは不明だが。 (俺は間違いなく、アックスのボルテッカに飲まれたはずだった…) 今でもはっきりと思い出せる。 フェルミオンの眩い光が、アースラごと自身を包んでいくさまが。 それが何故か今こうしてここにいる。ふざけた爆破ショーを見せられて。 (何故、人間同士で殺し合わねばならない…!) 歯ぎしりと共に、左の拳が固く握られる。 見ず知らずの人間と命を奪い合えとほざく、馬鹿げた2人組。 自分にラダムの――あの憎むべき悪魔の真似事をしろというのか。 「俺は…心までラダムになりはしない。必ずこのゲームを止めてみせる…!」 命を弄ぶ者達への烈なる怒りを込めて。 望まぬ殺戮を強要された人々を救うため。 殺すのは自分だけでいい。そして自分が殺すのはラダムだけでいい。 「ッ!」 がさり、と。 背後で草の音がなる。 反射的に振り返ると、Dボゥイはその手の逆刃刀を構えた。 油断はできない。このゲームに乗った人間も、いないとは限らない。 「そう身構えるな。俺はお前の敵ではない」 野太い男の声が響いた。 闇の中に溶け込むことなく、堂々とした尊厳をもって、その声はDボゥイの耳に届く。 「…今の、聞いていたのか」 「これだけ静かだからな」 銀髪の武人・ゼンガー=ゾンボルトが答えた。 右手には、ところどころ彫金が彫り込まれた銃剣付ライフルを持っている。 彼はこの異常事態の中にあって、幾分か平静を保っている様子だった。 着ている服を見る辺り、管理局に所属している人間らしい。 そして顔立ちからも、修羅場をくぐって積み重ねられてきた年季が漂ってくる。 …彼はまだ29歳なのだが、Dボゥイには知る由もない。 「アンタも、この殺し合いを止めるつもりなのか?」 「無論だ」 古風な言い回しに揺らぎはない。 むしろ落ち着いている人間には敵の方が多いのでは、と感じて再確認したのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。 「あのような連中を許すわけにはいかん」 ゼンガーは確固たる意志と共に言葉を発する。 「俺も、アイツらに好き勝手は――」 Dボゥイが言いながら近寄った瞬間、 ――ずどん。 「ぐぅっ!?」 灰色に光る銃撃が、肩を撃ち抜いた。 ゼンガーからではない。明らかに方向が違うし、何より彼の様子を見れば分かる。 「何奴ッ!」 周囲全体に響き渡るような、ゼンガーの怒声。 強烈な覇気と共に放たれた誰何の絶叫は、森の木々を震わすかのようだ。 銃撃音の反響が、水を打ったのように静まり返った。 静寂。 そしてそれを引き裂く足音。 「もうしばらく隠れていたかったが…」 現れたのは、漆黒のコートを身に纏った大男。 ゼンガーと同じ銀色の髪をロングにし、瞳は暗闇の中でなお妖しく光るように錯覚させる。 顔は至って端正。相当な美形だ。両手に握られた得物は、ガンズモードのクロスミラージュ。 「今のうちに食糧を調達しておきたくてな」 にやりと余裕たっぷりに微笑みながら、青年は言い放つ。 遂にこの男が――セフィロスが動いたのだ。 「…お前はこれを持って逃げろ」 セフィロスの姿を睨み付けながら、ゼンガーはDボゥイへと自身の銃を渡す。 「その代わり、その刀をよこしてくれ」 「っ…そんな無茶な…!」 撃たれた右肩を抑えながら、Dボゥイが口を開く。 どう考えても、彼の持っている銃剣の方がこんな逆刃の刀よりも強力なはずだ。 魔力の弾丸を放つピストル相手に、扱いづらい鉄の棒で戦うのは不利。 「そちらの方が慣れている」 しかし、ゼンガーはそれを一蹴した。 有無を言わさぬ強い口調は、Dボゥイの反論を許さない。 そして、恐らく殺人鬼と化したであろう男を前に、これ以上の口論は危険だ。 ついでに言えば、傷を負ったDボゥイは、今や足手まといでしかない。 「分かった…どうか、無事でいてくれ!」 せめてペガスがいれば。あの赤と白の魔人――テッカマンブレードになることさえできれば。 そんな苦々しい思いを抱えながら、Dボゥイは互いの武器を交換すると、全速力でその場を駆け出す。 ゼンガーはそれを見届けると、手にした逆刃刀をセフィロスに向けて構えた。 誇り高き武人の瞳に、鋭くも熱い眼光が宿る。 「いい度胸だ」 木の葉が舞った。 瞬時にダガーモードへと左の銃を切り替えたセフィロスが、疾風のごとき踏み込みでゼンガーへと迫る。 素早く、そして強烈な一撃。 鈍い灰色の輝きをたたえたダガーが、ゼンガーの逆刃刀へと振り下ろされた。 「ぬぅぅぅぅっ!」 凄まじい剣圧。 ゼンガーの両足が大地を踏みしめ、渾身の力と共に受け止める。 (ええい…鬼か魔物かこの力!) 慢心があったわけではない。 ただ冷静に、客観的に、彼は己の力量を評していた。 しかし、まさかただの斬撃で、自分を追い込むような腕力を持った人間がいるとは思いもよらなかった。 ゼンガーの角張った頬を冷や汗が伝う。 そして、それだけには留まらない。 ガンズモードを保っていた右側に魔力が収束される。複数の魔法陣が、さながら照準のように浮かび上がった。 「ファントムブレイザー」 冷たい声が発せられた。 同時に撃ち込まれる、魔力の奔流。 「うぉぉぉっ!?」 ゼンガーの身体が宙を舞った。 (この威力…ディバインバスターにも並ぶかっ!?) 思い出されるのは、あの白いバリアジャケットの幼女。 その思考と共に、彼の身体は地に叩きつけられる。 猛烈な砲火に、ゼンガーは完全に虚を突かれた。 セフィロスが一度に注ぎ込めるだけの魔力を乗せたファントムブレイザー。 確かにそれは、ゼンガーが何かの折に資料で見た、10年前のなのはの砲撃に匹敵する破壊力。 しかし能力制限がなければ、10年後の彼女のエクセリオンバスターにさえ近付くだろう。 そして、新人のティアナが扱うことを前提にしたデバイスは、その威力には耐えられない。 能力制限がクロスミラージュを救っていた。 (せめて、斬艦刀さえあれば…!) 立ち上がるゼンガーの瞳が、苦々しげにセフィロスを睨む。 対するセフィロスは、彼を嘲笑うかのようにその様を見下ろしていた。 こいつは相当な手練れだ。条件が同じでなければ、不利な方が負ける。 すなわち、自分が殺される。 (…否) そうではない。 いつから自分はそんな腑抜けた考えをするようになった? 武人は自問する。 自分を守る魔法の力がなければ戦えないのか? 斬艦刀がなければ何もできない腰抜けなのか? ――否。 断じて否! 「…非殺傷設定を使ったな」 射抜くような眼光が、ゼンガーの瞳から放たれる。 その先に立つのは、あの双銃を携えし男。 セフィロスのファントムブレイザーは殺傷設定ではなかった。 もろに食らったゼンガーに未だ外傷がないのが、その証拠。 殺す気がないとは思えない。 すなわち、遊んでいる。この一撃で決まっては面白くない、と。 「間抜けだな…そこまで言える余裕があるからには、この余裕につけこんでみればよかったものを」 「笑止!」 一喝する。 大地を揺るがすかのような、強く、気高き声で。 古の兵(つわもの)を統べる武将のごとき絶叫が響き渡った。 「本力でかからずして何のための戦いか! その程度の覚悟で、他者の命を奪おうなどと笑止千万!」 嘲笑するセフィロスに向け、ゼンガーは雄叫びを上げる。 「どっちなんだ」 やれやれと言った様子でセフィロスが言った。 殺し合いがしたいのかしたくないのか、と。 要するにゼンガーは、殺したいなら本気でやれと言っているのだ。対主催者側の立場を名乗ったというのに。 「貴様が殺す側に回るのは勝手だ。…しかし! その道を行くのならば、俺は貴様を連中同様の『悪』と見なす!」 ゼンガーは構えた。 一分の隙もなく、全身の随所に神経を走らせ、その闘志を研ぎ澄ませて。 逆刃刀の斬れぬ刀身ですら、彼にかかれば剣呑な刃と化す。 「悪? この狂った地で善悪などと…」 「黙れ!」 セフィロスの言葉を、強い語気をもって遮る。 最早問答は無用。たとえ相手が自分より強かろうと、自分は自分がそうと信じる悪と戦うだけのこと。 「そして聞けッ!」 悪にかける情けなどない。 勝てぬ戦であろうとも、悪に退く脚など持たぬ。 「我はゼンガー=ゾンボルト…」 故に、叫ぶ。 「――悪を断つ剣なり!!!」 【一日目 AM1 41】 【H-1 森林】 【ゼンガー=ゾンボルト@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神】 [参戦時間軸]17話終了後。ラミア達が「向こう側」のヴォルケンリッターの元へ向かった頃 [状態]健康 [装備]逆刃刀@魔法少女リリカルなのはStrikerS―時空剣客浪漫譚― [道具]支給品一式・ランダム支給品0~2個 [思考・状況] 基本 全ての悪を斬り伏せる 1.無為に他者の命を奪うのを、言葉で咎めはせん。ただ倒すだけのこと! 【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 [状態]健康 [装備]クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]支給品一式、「治療の神 ディアン・ケト」 [思考・状況] 基本 事態を静観し、潰し合うのを待つ 1.ひとまず今だけは食料を奪うためにこいつを殺す 2.随分喚く奴だ。拠点を移さねばならんな 3.向かってくるのならば、六課の連中だろうと容赦なく殺す 【Dボゥイ@宇宙の騎士リリカルBLADE】 [参戦時間軸]8話。アースラがボルテッカを食らった時 [状態]右肩を撃ち抜かれている。止血はまだされていない [装備]冥銃剣・逢魔ヶ刻@リリカルスクライド//G.U. [道具]支給品一式・ランダム支給品0~2個 [思考・状況] 基本 この馬鹿げたゲームを止める 1.あの人…頼む、無事でいてくれよ…! 2.そういえば、身体の調子が…? [備考] ※テックシステムに蝕まれた肉体は回復しています 025 本編投下順 027
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ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI 時は流れ、暗黒の森にも微かな明度が差していた。 フィールド全体を覆っていた夜の闇はなりを潜め、僅かに顔を出した太陽の光が広がっていく。 朝靄漂う森の中、かさり、かさりと響く音。 朝露に濡れた草木を踏みしめながら、林間を進む者達がいる。 並んで立つ2人組はどちらもが女性であり、どちらもが白い服を身に纏い、どちらもが金色の瞳を持っていた。 とはいえ共通点はそれだけで、他の部分は大幅に異なっている。 まず、頭髪。片方は瞳と同じ金色だが、もう片方はむしろそれと対を成す銀髪。 続いて、外見年齢。金髪の方は10代後半の少女だが、銀髪の方はその10代に差し掛かるか否かと言った幼児。 特に金髪の方はというと、非常に整ったプロポーションを持った、グラマラスな女性だった。 豊かに胸元の布を押し上げる双丘、一級品の彫刻のごときラインを有した肢体。 隣の幼児体型の銀髪と並べると、これは一体何の嫌がらせですか、とでも言いたくなる。 とはいったものの、もはや銀髪の方はそれも気にならなくなったらしい。 傍らでふわふわと浮遊するガジェットを見ながら、何事かを思考している。 「まずいな……レリックの反応が移動を始めた」 微かに苦々しげな響きを込めながら、銀髪――チンクが呟いた。 片方を眼帯に覆われた黄金の隻眼は、レーダーの上で動くマーカーをじっと見つめている。 「レリックの持ち主が、病院を出たということ?」 「そうなるな」 金髪――明日香の問いに、チンクは答える。 「となると、結構厄介なことになりそうね……」 言いながら、明日香が嘆息した。 もしも目標が病院に篭ったままだったならば、ある程度はスムーズに事が進んだだろう。 しかし目標は動いている。となると、少々面倒なことになってくる。 もとより病院というものは、この舞台の中でも比較的安全な場所と言えた。 バリケードを設置すれば侵入者を遮断できるし、医療品を使った治療も行える。 もっとも、自分達戦闘機人のように、通常の人体とは異なる身体を持っている者の場合は、若干勝手が違ってくるのだが。 ともかくも、病院に篭っていれば、ある程度の安全性が確保できる。 つまりそこに居続ける者は、この殺し合いに消極的である者である可能性が高い。 だが、今回のようにそこから移動する人間は違う。 わざわざ安息の地を捨ててまでフィールドをうろつく理由は2つに1つ。 積極的に殺し合いを止めようとする人間か、積極的に殺し合いに乗ろうとする人間のどちらかだ。 特に後者であった場合、非常に始末が悪くなる。不用意に接触しては、そのまま戦闘になりかねない。 (もしも戦闘になった場合、レリックの回収と姉妹との合流……どちらを優先する?) そしてこの場において、もっともチンクが問題視していたのが、それだ。 既にメッセンジャーとして、2機のガジェットを街に放った。 これをクアットロとディエチが読めば、2人は日が昇りきるまでに病院に向かうだろう。 しかしそこに、自分がいなかった場合はどうなる。 時間の推移から察するに、2人が病院に着くのは最初の放送の後となる可能性が高い。 前ならばまだよかった。無人の病院に着いたとしても、後から流れる放送に自分の名前がなければ、ひとまず生きていると確認は取れる。 だが生憎と、それは望めそうにない。情報も何もないままに、姿を現さないチンクの安否への不安に囚われることとなる。 叶うことならばレリックを後回しにし、姉妹との合流を急ぎたいとは思う。 しかし、それではそのタイムロスの間に、聖王の器が殺害されてしまうかもしれない。 脱出のための鍵を取るか、共に脱出すべき家族を取るか。 答えが出るとも到底思えない、究極の二者択一。 「……天上院、ひとまずお前の支給品を見せてくれないか? いざ戦闘となった場合のために、使える手札は把握しておきたい」 だがどちらを選ぶにせよ、まずはしておかなければならないことがあった。 時間を破ってまでレリック確保に専念するにせよ、時間を守って敵前逃亡するにせよ、武器は必要だ。 「分かったわ」 言いながら、明日香がデイパックの口を開け、中の物をあさり始めた。 無論、ケースに入れられた3つのカプセルについては伏せながら。 「一番目立つのはこれね」 最初に取り出されたのは、大仰な兜だった。 煌びやかな宝石がちりばめられた豪奢な造形に、両脇からせり出した猛牛のごとき凶悪な角。 中央には黄金の翼を生やした、コブラのレリーフが取り付けられている。 見るからに剛健な兜が、明日香の両手に抱えられていた。 「確かに防御力はありそうだが……頭だけ守ってもな」 「ええ……それにこれ、すごく重いし」 互いに険しい表情を浮かべるチンクと明日香。 これがまだ鎧だったならば、まだ防御手段としては有効だっただろう。 しかし、この支給品は兜単品。頭狙いの攻撃以外は防げない。その上一般人が扱うには凄まじく重い。 これでは装備したとしても、ただの重りにしかなり得ないだろう。 もっとも、このインパクトに見合うだけの人物が装備すれば、それなりの威圧感を与えられたのだろうが。 ともあれ少なくとも、これは明日香には見合わない物だ。現状において役立たずとなったそれを、デイパックにしまう。 そうして続いての支給品を取り出した。 「これは……籠手、か?」 外気に晒されたのは、またしても黄金色に輝く物体だった。 緑色の宝石を煌かせ、獅子の顔を象ったようなそれは、見たところ左腕に嵌めるためのガントレットらしい。 「ここに……ほら」 怪訝そうな表情を浮かべるチンクの目の前で、明日香がそこから何かを引き抜いてみせた。 現れたのは1振りのナイフ。エメラルドのごとく透き通った、見事な刀身を輝かせている。 他に機能はないようだ。要するに、これはそのナイフの鞘らしい。 「また随分と大仰な鞘だな」 もう少しデザインセンスはなかったものか、と、呆れながらチンクが言った。 ともあれその鞘――彼女らは知る由もないが、名を「ガオーブレス」と言う――を、明日香の左腕に嵌める。 頑丈な金属で作られている以上、籠手としても一応扱うことはできるだろう。 おまけに、それほど重くない。戦闘が控えていると分かった以上は、装備しない手はない。 そして、取り出された最後の1つは、 「……トランプ?」 絵札52枚に、ジョーカー2枚。ケースに収められた、54枚組1セットのトランプだった。 何の変哲もない、ただのカード。おおよそ意味があるとは思えない。要するに、ハズレ。 どうやら明日香に支給された物のうち、役に立つのはガオーブレスぐらいだったらしい。 もっとも、先の兜などは、最悪ランブルデトネイターで爆弾へ変えることもできる。ただ、それはあくまで最終手段。 考えても見てほしい。それほどまでに大きく重いものを、わざわざしんどい思いをしてまで誰が投げようか。 「まぁ、何にせよ、このレリックの持ち主と相対した時には……、!」 言いかけたチンクが、そこで言葉を切った。 「どうしたの?」 「しっ……誰かが近寄ってきている」 首を傾げた明日香に向かって囁くと、木陰に隠れるように指示を出した。 戦闘機人の鋭敏な聴覚は、唯人たる明日香には捉えられないような音でさえも聞き分ける。 彼方から迫ってくる車輪の音。すなわち、何者かの気配。 可能性は薄いだろうが、あの緑の鎧の男かもしれないのだ。明日香を庇いながら戦える相手ではないことは、先の戦闘で重々承知している。 やがて音量は彼女の耳にもはっきり聞き取れるようになり、そのまま通り過ぎた。 ぶぅぅぅぅぅん。エンジン音が疾走し、彼女らのすぐ傍を走り抜ける。 一瞬しか見ることはできなかったが、確かローラーブーツを履いた少女だったか。 ちょうどチンクと外見年齢は同じくらい。紫の髪に、赤い瞳が特徴的だった。 感情に乏しい表情で、コートをたなびかせながら脇を通過していき―― 「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」 思いっきり見覚えのある人間を、チンクは身を乗り出して呼び止めた。 ◆ 自分は何をやっているのだろう。 心底、ユーノ・スクライアは呆れ返っていた。 自分の保身のために人間の男としての尊厳を捨て、彼は1匹の雄フェレットとしての道を選んだ。 そもそもそれが、自分が小さくなれば首輪も外れるだろうという、馬鹿馬鹿しい判断ミスに端を発している辺りが情けない。 おかげで自分は、人間として行動することを許されなくなった。少なくとも、この少女と同行している限り。 この身体では支給品を扱うこともできないし、仲間との合流にも支障をきたす。何より、獣として振る舞うのは居心地が悪い。 そしてそのユーノだが――今は所在なさげに、小さな顔を真っ赤に染めていた。 現在地、幼女の胸元。扇情的なバニースーツと、暖かな体温に挟まれている。 確かルーテシアと名乗ったか。この少女は現在の状況に、微塵も羞恥心を抱いていないようだ。 これだから、獣というのはやってられない。人間じゃないからということで、すぐにこんな風に扱われる。 自分はれっきとした男なのに。男なりに恥ずかしくてたまらないのに。 どぎまぎしつつも、しかし一切の抵抗もできないまま、ユーノは疾走するルーテシアの胸に身を預けていた。 ……いやいやちょっと待て。自分は一体何をどぎまぎしているんだ。 いかに女性とはいえ、この子はまだ幼い女の子じゃないか。 これが成熟したセクシーな女性ならまだしも、何を自分は子供相手にこんなに過剰反応しているんだ。 まさかなのはと初めて会った、ガキの頃の自分じゃあるまいし。変態嗜好のロリコンでもあるまいし。 相手は子供。慌てることはない。自分にそっち方面の趣味は絶対ない! そんな風にして、必死に平静を保とうとする。 「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」 そして次の瞬間、それは唐突に打ち切られた。 「え?」 背後から声がする。自分達を呼び止める叫びが響く。 ユーノにとっては聞き覚えのない声。しかし、ルーテシアには覚えがあったのだろう。 反射的にマッハキャリバーにブレーキをかけると、数秒の思考の後、踵を返して再度加速する。 緩やかな速度で後退すると、そこには1人の銀髪の幼女と、1人の金髪の女性の姿があった。 「ご無事でしたか、ルーテシアお嬢様」 歩み寄ったのは銀髪の方で、発した声音も先ほどの制止と同じ。 片方しか開いていない金色の瞳に安堵の色を映し、外見の割には幾分か落ち着いた口調で言った。 「チンク」 いつも通りのぽつりと呟くような声で、ルーテシアがその名を呼ぶ。 チンク、という名前には聞き覚えがあった。ルーテシアと面識のある人間として、紹介された名前だったはずだ。 「知り合いなの?」 「まぁ、そんなところだ」 金髪の明日香の問いかけに答えたことからも、その様子が伺えた。 (……うん? ちょっと待てよ?) と、その時、不意に浮かんだ疑問が1つ。 ルーテシアの仲間は見つかった。彼女を「お嬢様」と呼ぶ隻眼の幼女が。 (で……この人は一体何?) このチンクという少女は一体何者で、一体ルーテシアとどういった関係にあるというのだ。そもそもルーテシアは何者なのだ。 普通に考えるならば、それこそ良家のお嬢様で通るだろう。 旧時代の貴族の家系。かの有名なモンディアル家のような富豪の令嬢。あるいは管理局高官の娘とも。 異様に幼いチンクの容姿も、使用人の娘だとか、乳兄弟だとかといった線で説明はつく。 そう。普通ならば。 だがこの少女の容姿の何としたこと。片目に眼帯をした少女など、真っ当な家庭ではまず見られない。 ましてや、それが医療用の白いものでなく、レザーでできたいかにも悪そうな黒眼帯なら尚更だ。 こんな見るからに怪しい娘に「お嬢様」と呼ばれる少女が、普通の良家の子供なわけがない。 更に引っ掛かるのは、例の「アジト」という言い回し。 本当なら信じてやりたい。こんな想像はしたくない。でもそう思わずにはいられない。 こうした情報から想定しうるルーテシアの身分を、不幸にもユーノは知っていた。 すなわち――マフィアの娘。 ヤクザのボスの子。 極道の世界のお嬢様。 ドコノクミノモンジャワレスマキニシテシズメタルゾコラ、とか、そういう世界の人。 背筋が一気に粟立った。全身の毛皮が逆立った。 ひょっとすると自分は、とんでもない子を見つけてしまったのではなかろうか。 まして自分が人間であるとばれ、こんな破廉恥な行いに出たと知れた時には―― 「――それでお嬢様、その動物は?」 がちがちと震え上がるユーノの思考を、チンクの問いが遮った。 「ユーノっていう……喋るイタチの子」 「……フェレットです……」 本当はフェレットですらない。人間です。それも貴方よりも大分年上なんです。 そうだと気付いてほしい。 ああいや、微妙。そうは気付いてほしくないかもしれない。少なくとも、この極道っぽい子にはバレない方がいい。 簀巻き、指詰め、ロシアンルーレット。想定されるありとあらゆる「けじめのつけ方」。 どれもこれも、できれば味わいたくない。最も、チンクは極道の人間ではないのだが。 「へぇ……こんな子まで参加させられてるのね」 ルーテシアの胸元のユーノを覗き込みながら、明日香が言った。 周囲が周囲なだけに、彼女の抜群のプロポーションはよく目立つ。 所在なさげにユーノは視線を逸らした。 どうもここに来てから、自分はこんな目にばかり遭っているような気がする。 この殺し合いから脱出できたら、しばらく女の子とは距離を取りたい。割と本気でそんなことを思っていた。 「それでお嬢様は、どちらに向かわれるおつもりで?」 「ドクターのアジトに、ゼストやチンク達を捜しに……」 「我々もそこから来たのですが、特に他には誰も……」 ユーノがどぎまぎしてたり肝を冷やしている間にも、ルーテシアとチンクは話を進めていく。 どうもこの2人もそのアジトという場所を目指し、そこで何らかの収穫があってここまで来たらしい。 それがチンクの横でふよふよと浮いている、楕円型の機械。ガジェットとか言っていたか。 それにはレーダーがついていて、レリックという、ここからの脱出のために使える物を探知できるのだそうだ。 そして今、それが反応を示している。すなわち、脱出の鍵が見える範囲にある。 「あとは聖王の器……それを捜すために、既に姉妹達にも、アジトから連絡を入れてあります。とはいえ、こちらから一方的にですが」 「ちょっと待って! そんなの聞いてないわよ」 「ああ、すまなかった。言うのが遅れていた」 隠し事をされた明日香の憤慨を、チンクがさらりと流す。どうやらこの2人、あまり友好的でもないらしい。 「いかに貴方と言えど、ガリューや地雷王なしでは危険すぎる……我々と共に病院へ向かい、姉妹の保護を受けてはもらえないでしょうか」 最後に、チンクがルーテシアへと懇願した。 これはユーノにとっては知る由もないが、チンクは彼女の存在によって、ようやく決心をつけることができたのだ。 脱出の鍵となるレリックと器を探すのが先か、共に脱出すべきクアットロとディエチと合流するのが先か。 彼女が選んだのは、後者。 強力な召喚術の使い手たるルーテシアだったが、この場ではどうやら下僕達を呼ぶことはできないらしい。 すなわち、召喚こそを戦闘の肝とする召喚士にとっては、あまりにも危険すぎる状況。 彼女はスカリエッティの大事な協力者だ。家族同様、無事に連れ帰らなければならない。 そのためにも、今レリックを持っている相手との戦闘に巻き込むことはできなかった。 だから、病院に集まるであろう姉妹にルーテシアを預ける。必然的に、朝までの集合の約束を守ることもできる。 「うん、分かった」 ゆっくりとルーテシアが首を縦に振ったことで、この場の協力関係は確定した。 ルーテシア、ユーノ、チンク、明日香。以上3名と1匹(厳密には4名)で病院を目指す。 「じゃあ、行きましょうか」 女性陣の中でも最年長と思われる明日香が、率先して先へと進む。 一方、ルーテシアの胸に抱えられたユーノはというと、何やら難しそうな表情を浮かべていた。 どうにも引っかかるのだ。ルーテシアの反応が。 (さっきの、レリックって言葉を聞いた時……この子の目の色が変わった) 今までぼんやりとしていた彼女の赤い瞳に、ほんの少しだけ感情が見えた。鋭さが増した。 そのレリックという何かに対して、彼女が強い執着を見せたのだ。 つまりそれは元々ルーテシアにとって、とても重要な意味を持つものであったのだろう。 ではそのレリックというのは、一体何なのだろうか。 ルーテシアが求めていたもの。それでいて、この殺し合いからの脱出さえも可能とするもの。 であればその力を、彼女は一体何のために使おうとしているのだろう。レリックの確保とはあくまで手段であり、目的ではないはずだ。 一体彼女は―― 「うわっ!?」 瞬間、ぐらり、と。 身体が揺れた。ユーノだけではない。ルーテシアの身体も。 すとんと足場の高度が落ち、衣服の隙間からフェレットの身体が落下する。 足並みをチンク達と合わせるべく、ルーテシアがマッハキャリバーを解除したのだろう。 結果、ローラーの分の身長が縮まり、それによって振動が生じたのだ。 それによって地面に投げ出されたユーノは、そのままチンクの足元へと落下する。 「いてて……」 小さな呻きを漏らしながら、毛皮についた土埃をふるふると払った。 そして、視線を戻す。 ちょうどその先にはチンクの身体。衣服の裾から覗くもの。 そこにあったのは、 「――ッッッ!!?」 「……そういえば、貴方……下着つけてなかったわね」 きょとんとしたチンクと動揺するユーノを見て、明日香がため息をついた。 【1日目 早朝】 【現在地 E-9】 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】健康、幸せ?、混乱、フェレットに変身中 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本 なのはの支えになる、ジュエルシードの回収 1.ルーテシア、チンク、明日香と共に病院を目指す 2.ルーテシアの保護 3.くぁwせdrftgyふじこ!? 4.Lや仲間との合流 5.首輪の解除 【備考】 ※JS事件に関連したことは何も知りません ※プレシアの存在に少し疑問を持っています ※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖― 、マッハキャリバー(待機形態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS シェルコート@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式×2、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、バリアのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本 ナンバーⅩⅠのレリックの捜索 1.ユーノ、チンク、明日香と共に病院を目指す 2.仲間との合流 3.ジュエルシードの回収を手伝う 【備考】 ※参戦時期はゆりかご決戦前です ※ユーノが人間であることを知りません ※殺し合いに全く興味がありません 【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康 【装備】ガオーブレス@フェレットゾンダー出現! 【道具】支給品一式、ラオウの兜@ティアナが世紀末にやって来たようです、 トバルカインのトランプ@NANOSING、ゾナハカプセル@なのは×錬金 【思考】 基本 殺し合いには乗らない。仲間達と合流し、プレシアを打倒する。 1.ユーノ、ルーテシア、チンクと共に病院を目指す 2.チンクっていうこの子は……信用し切れない 3.チンクとは協力するけど、何があっても対応出来る様に隙は見せない様にしよう 4.ゾナハ……って何? 5.全くもう、この子は…… 【備考】 ※転移魔法が制限されている可能性に気付きました ※万丈目にバクラが取り憑いている事を知りません ※チンクの「万丈目に襲われた」という情報は、嘘か誤りだと思っています ※ガオーブレスのギャレオンを呼び出す機能は封印されています ※トバルカインのトランプが武器として使えることに気付いていません 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、ガジェットドローンⅠ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS、工具セット@オリジナル、 料理セット@オリジナル、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA s 【思考】 基本 姉妹と一緒に元の世界に帰る 1.ユーノ、ルーテシア、明日香を伴い、病院に向かって医療品を集め、姉妹との合流を図る 2.姉妹と合流した後に、レリックを持っている人間を追う 3.姉妹に危険が及ぶ存在の排除、及び聖王の器と“聖王のゆりかご”の確保 4.こいつ、獣のくせして何を驚いてるんだ? 5.クアットロと合流し、制限の確認、出来れば首輪の解除 5.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲 6.天上院を手駒とする 【備考】 ※制限に気付きました ※高町なのは(A s)がクローンであると認識しました ※この会場にフェイト、八神はやてのクローンがいると認識しました ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました 【チーム:ユーノとハーレム】 【共通思考】 基本 仲間達を集め、聖王のゆりかごで殺し合いから脱出を図る 1.病院に向かい、クアットロ、ディエチと合流する 2.その後は戦闘可能な面々でヴィヴィオとレリックを探す 【備考】 ※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気づいていません。 Back やわらかな温もりに瞳閉じ 時系列順で読む Next 戦いの嵐、再びなん? Back やわらかな温もりに瞳閉じ 投下順で読む Next 敵か味方か? Back 遠い声、遠い出会い ユーノ・スクライア Next Reconquista(前編) Back 遠い声、遠い出会い ルーテシア・アルピーノ Next Reconquista(前編) Back されど嘘吐きは救済を望む(後編) チンク Next Reconquista(前編) Back されど嘘吐きは救済を望む(後編) 天上院明日香 Next Reconquista(前編)
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キャラクターファイル 010 ヴィータ 八神家で暮らす家族のうちのひとり。真正古代ベルカ騎士で、愛機は鉄槌・グラーフアイゼン。 外見は幼げに見えるが、実年齢・精神年齢ともにちゃんと大人。職場はなのはと同じ管理局の航空戦技教導隊。 道場での教え子ミウラには、主に「爆破粉砕」を教えている。 大人の女性?な鉄槌の騎士 キャラクターファイル 011 ミカヤ・シェベル 抜刀居合術「天瞳流」の師範代。インターミドル出場歴7回のベテランで、都市本戦の常連。 威風堂々のトップファイターだが、優勝経験はいまだない。 ヴィヴィオやジーク・ハリーらをはじめ、インターミドル選手からは意外と慕われたり尊敬されたりしている。 天瞳流抜刀居合剣士 キャラクターファイル 012 ミウラ・リナルディ 八神家道場の通い弟子で格闘技選手。集束魔法の使い手で、魔力を足に集めて対象を斬り砕く「抜剣」が切り札。 拳・蹴りとも全身でぶつかっていく強打を武器に、愛機スターセイバーとともにインターミドル勝ち抜きを目指す。 明るい性格だが若干気弱で、緊張に弱い。 星の剣を持つ少女 キャラクターファイル 013 ルーテシア・アルピーノ 地方世界在住の女の子。ヴィヴィオやコロナにとっては少し年上の良き友人。分け隔てのない性格で、年下・年上誰とでも仲良し。 本来は召喚魔導師だが、召喚抜きでも正統派魔導師として戦える。魔法以外にも建設設計やデバイス制作など、多彩な才能を持つ。 クールでお茶目なハイブリッド魔導師 キャラクターファイル 014 エルス・タスミン 手錠型デバイス「パニッシャー」を駆使した拘束魔法を得意とする結界魔導師。 「違反封縛(ルールマスター)」と名付けた戦闘技術は、相手の動きを拘束して行動不能&ギブアップを狙う独特の戦法。 学校では生徒会長を務める真面目な生徒でもある。 生徒会長は結界魔導師!
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海鳴市エリートクラス1 入手カードレベル:14 エリア エリア名 DP EX スタンプ カード1 カード2 カード3 カード4 37-1 海鳴市エリートデュエル1 10 38~48 1600~1920 高町なのは[夏服小学生] ユーリ&レヴィ[末っ子たちの応援] ディアーチェ・K・クローディア[ブラックスイート普段着] 夜天の書ミ:A べ:? イ:C 37-2 海鳴市エリートデュエル2 アリサ・バニングス[リーダー気質小学生] 八神リインフォース・アインス[八神堂店員] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] 夜天の書ミ:D べ:? イ:? 37-3 海鳴市エリートデュエル3 月村すずか[読書好き小学生] 八神シャマル[研修中医大生] ディアーチェ・K・クローディア[ブラックスイート普段着] ---- 37-4 海鳴市エリートデュエル4 アリサ・バニングス[海聖小学校生徒] 八神ザフィーラ[近所の人気者] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] 夜天の書ミ:B べ:? イ:? 37-5 海鳴市エリートデュエル5 アリサ・バニングス[海聖小学校生徒] 八神はやて[八神堂店主] ディアーチェ・K・クローディア[一家の料理番] 夜天の書ミ:E べ:? イ:? 37-6 VS アリサ 報酬 アリサ・バニングス[海聖小学校生徒] Lv 20 (AT+50) レアチケットピース 1枚 マイDPキャンディ 1個 (4600スタンプ) 海鳴市エリートクラス2 入手カードレベル:14 エリア エリア名 DP EX スタンプ カード1 カード2 カード3 カード4 38-1 海鳴市エリートデュエル6 10 38~48 1600~1920 高町なのは[夏服小学生] 八神ザフィーラ[八神家の愛犬] シュテル・スタークス[インテリ中学生] 夜天の書ミ:C べ:? イ:? 38-2 海鳴市エリートデュエル7 月村すずか[読書好き小学生] 八神リインフォース・アインス[八神堂店員] シュテル・スタークス[ゆるふわ普段着] 夜天の書ミ:F べ:? イ:? 38-3 海鳴市エリートデュエル8 アリサ・バニングス[リーダー気質小学生] 八神シャマル[ほんのり医大生] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] ---- 38-4 海鳴市エリートデュエル9 月村すずか[海聖小学校生徒] 八神はやて[普通の小学生気分] シュテル・スタークス[インテリ中学生] グラーフアイゼンミ:C べ:? イ:? 38-5 海鳴市エリートデュエル10 リニス・ランスター[真面目なメイドさん] 八神ザフィーラ[八神家の愛犬] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] グラーフアイゼンミ:F べ:? イ:? 38-6 VS すずか 報酬 月村すずか[海聖小学校生徒] Lv 20 (DF+50) マイMPクッキー 1個 (4700スタンプ) 海鳴市エリートクラス3 入手カードレベル:15 エリア エリア名 DP EX スタンプ カード1 カード2 カード3 カード4 39-1 海鳴市エリートデュエル11 10 39~48 1600~1920 高町なのは[夏服小学生] 八神はやて[八神家の大黒柱] キリエ・フローリアン[マイペース次女] 夜天の書ミ:C べ:? イ:? 39-2 海鳴市エリートデュエル12 フェイト・テスタロッサ[普段着小学生] 八神ヴィータ[気合いの小学校3年生] シュテル・スタークス[インテリ中学生] 夜天の書ミ:F べ:? イ:? 39-3 海鳴市エリートデュエル13 アリサ・バニングス[リーダー気質小学生] 八神ザフィーラ[近所の人気者] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] 39-4 海鳴市エリートデュエル14 月村すずか[読書好き小学生] 八神ヴィータ[気合いの小学校3年生] シュテル・スタークス[インテリ中学生] フレイムアイズミ:A べ:? イ:? 39-5 海鳴市エリートデュエル15 高町なのは[お部屋着小学生] のろいうさぎ[ヴィータの宝物] ユーリ・エーベルヴァイン[一家の末っ子] フレイムアイズミ:D べ:? イ:? 39-6 VS なのは 報酬 レアチケットピース 1枚 レベルアップ+3 1個 (4800スタンプ) 海鳴市エリートクラス4 入手カードレベル:15 エリア エリア名 DP EX スタンプ カード1 カード2 カード3 カード4 40-1 海鳴市エリートデュエル16 10 39~49 1600~1920 リニス2世 [テスタロッサ家の愛猫] 八神シャマル [ほんのり医大生] ディアーチェ・K・クローディア [ブラックスイート普段着] フレイムアイズミ:C べ:? イ:? 40-2 海鳴市エリートデュエル17 アリシア・テスタロッサ [海聖小学校生徒] 八神シャマル [研修中医大生] グランツ・フローリアン [グランツ研究所の博士] フレイムアイズミ:B べ:? イ:? 40-3 海鳴市エリートデュエル18 アリシア・テスタロッサ [海聖小学校生徒] のろいうさぎ [ヴィータの宝物] レヴィ・ラッセル [リボン普段着] ---- 40-4 海鳴市エリートデュエル19 リニス2世 [テスタロッサ家の愛猫] 八神シャマル [ほんのり医大生] グランツ・フローリアン [グランツ研究所の博士] フレイムアイズミ:E べ:? イ:? 40-5 海鳴市エリートデュエル20 アリシア・テスタロッサ [T H店長の娘さん(姉)] のろいうさぎ [ヴィータの宝物] ディアーチェ・K・クローディア[王の特訓] フレイムアイズミ:F べ:? イ:? 40-6 VS アリシア 報酬 アリシア・テスタロッサ[トリックスター] LV 30 (LC+100) なのは&フェイト&アリシア[魔法少女達の祝福] レアチケットピース 1枚 (4900スタンプ)
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2009-07-08-魔法少女リリカルなのは総合スレ ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 29 :学生さんは名前がない:2009/07/10(金) 05 58 28 ID pWEhw3hH0 パンツなんだよぉ… とある休日、ソファで休憩していると「なぁなぁ」と呼び声がかかった。 心にキュンっ…と来てしまうこの声の主は、振り返らなくてもあの人だと100%わかっていたけど、その確率を120%に 上げるために振り向くと…、、Angel of Holiday in YAGAMIKE、はやてちゃんが立っていたんです。 八神家の主であるはやてちゃんが僕なんかに何の用があるというのだろうか… 「これなんやけど…」 はやてちゃんはその両手で灰色の布切れをピンっと拡げる。えらく薄汚い布切れだったんだけども、よくよく見ると、 それは、僕が普段履きなれたパンツだった…。 「えっ……?えええっ、あの、えっと、あの……」 はやてちゃんと話すだけでも緊張するというのに、加えてよくわからんこの状況。頭はこんがらがる一方だ。 「いやな、ここの部分なんやけど…破けてもうてるんよぉ」 はやてちゃんはパンツの後部を指摘する。後部はパックリと破けている。長年付き合ってきたパンツだから、寿命という ことなのだろう。そして、わざわざそれを伝えるために、はやてちゃんはこんな小汚いパンツをここまで運んできてくれたのだ。 「あ、の……、ど、どうも…ありがとうございますっ…、それは…自分で捨てとくので、あの、はい……」 「せやけど、これ捨ててもうたら困るんと違うん?」 確かに困る。何故ならば、それを捨ててしまうと僕のパンツの合計枚数のうち25%が消えてしまうことを意味するからだ。 かと言って、そのパンツはどう見てももう修復は不可能。これは最早… 「いや、あの、ダイジョブ、です…。丁度天気もいいですし、今から買ってきますので…」 そう、これが現状におけるベストな選択だ。とにかく今は、一刻も早くその恥ずかしいパンツをはやてちゃんから 取り返しこの場をやり過ごすのが最善…。そういうわけなので、これからパンツを取り返し、今回はこれにて一件落着… 「あ、買い物に行くん?だったら私も行ってええやろかぁ?」 「はい?」 「私も付いてってええかなぁ?」 はやてちゃんのこの一言により、一件は落着しなかった。それどころか謎の気流に乗って急上昇してしまった…。 ”はやてちゃんとお買い物”、はやてちゃんにとってはただの買い物であっても、僕にとってのそれは、二人並んで歩く というデート以外の何物でもないのだ…。しかも買うものがパンツってのも…正直言って恥ずかしぎる……。なので、 「あ、の……、ありがたい…話なのですけど…こ、こんかい」 「あらぁぁぁ~いいじゃないの~、二人で行ってきなさいな♪」 僕の苦渋の選択を軽快に妨げたのはシャマルさんだった。いや、シャマルさんね…、 シャマルさんにだけ聞こえるように声の音量を絞る。 「シャマルさん…。あなたは僕の気持ちを知ってる人でしょぉ…?お願いしますから、今回ばかりは 意地悪しないでくださいよぉ…。第一、はやてちゃんと並んで歩くなんて、そんなことになったら…僕は…ぅぅう…」 30 :学生さんは名前がない:2009/07/10(金) 05 58 43 ID pWEhw3hH0 「なんだ、何か不都合なことでもあるのか?」 「え?」 突然、僕らの会話に入ってきたのはシグナムさんだった。 「い、いえ…特に、ない、です…」 不都合なことはない。むしろ嬉しい事尽くめなんだ。でも、僕ははやてちゃんと並んで歩いたらたぶんおかしくなっちゃうし、 それにパンツはやっぱり…ぅぅう…。だって、パンツだよパンツ…… 「特にないという割には納得のいっていないようだが?」 シグナムさんは更に追い詰めてくる。ここで本当の僕の気持ちぶちまけてしまえば済むようにも思えるけど、話した途端、 「使用人の分際で主に恋愛感情などと!」と叱られるに決まっている…。なので、シグナムさんにだけはこの恋心について 絶対に悟られてはならないんだ…。ぅう、この状況を切り抜けるためにもなんとかしなくては…、、 「ほ、ほら、今は梅雨の時期ですし、急に降り出しても困りますし…」 「今日の天気は晴れだが?それに雨が心配であれば傘を持って行けばいいだけのことだろう」 シグナムさんは的確に正論を言ってくる。ああ…、もう、ダメなのか…いや嬉しいことなんだけど…、でも、パンツ…… 「うーん、ほんならやっぱり一人で行ってもええよ?」 「えっ…」 はやてちゃんによる救済の一言だった。良かった…。ちょっと残念だけど、やっぱりパンツは恥ずかしいもんね… 流石はやてちゃんだ…、男心のそういう部分にまで気が回って… 「そん代わりなんやけど…、私の分も買うてきてくれへんかなぁ…?」 「は、はい?なにを、ですか…?」 「パンツや。ほんまは私も行きたかったんやけど…」 一瞬何が起きたのかわからなかった。目の前で最愛の人が自分のパンツを買ってきてくれないかと頼んできたのだ。 これはシャマルさんのような意地悪染みたものではなく、純粋な気持ちによる依頼であることは明白だった。 僕を男として意識していないはやてちゃんの、純粋無垢なパンツ購入依頼だったんだ…。 けど、そんな依頼…、受け入れられるはずがない…、ないでしょ……だってパンツだよパンツ…。パンツなんだよ…? ここはもう、覚悟を決めるしかない…。ぼ、ぼくは……ぅぅう…ぼくあ… 「はやて、さん…、やっぱり、その…一緒に買い物行きましょう……そのほうが、いいと、思う、ので…」 「ほんまにぃ?良かったぁ~、じゃあすぐ支度せななぁ」 何も二人きりというわけではないのだ。ヴィータちゃんあたりを誘えば確実についてくる… 「ヴィータちゃんなら行かないと思うわよ♪あの子、パンツにあまり興味がないから♪」 ボソっと隣でシャマルさんが何か言っているみたいだったけど、そんなことは聞こえないことにして、 僕は絶対に3人以上で買い物に行くんだ。2人きりは無理なんだ……だって…パンツ……、、はやてちゃん…。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 98 :学生さんは名前がない:2009/07/17(金) 06 53 33 ID I5eIVTeD0 3人目を探すよぉ… はやてちゃんが支度をしている間になんとしてももう一人、買い物に行く人間を探さなくちゃならない…。 勿論ヴォルケンの誰かってことになるんだけど、ザッフィーさんとリインちゃんは仲良くお昼寝をしているみたいなので 起こすわけにもいかない。そうなると残るメンバーはヴィータちゃんにシグナムさんにシャマルさんの3人だ。 「この中から…、一体…誰を……」 「悪いことは言わないわぁ。二人で行って来なさいな♪」 シャマルさんは相も変わらず隣でちょっかいをかけてくる。 確かに「二人で行く」という選択肢は素晴らしいんだ。だってはやてちゃんとデートをすることが出来るのだから…。 でも、そんなことをすれば、間違いなく、”はやてちゃんと二人きりで歩く”という行為が頭の中でグルグル巡って、僕は 我を忘れてしまうだろう…。その事態だけは、絶対避けなければならない。そのためにもストッパーは必要不可欠だ…。 「あのー、そんな難しい話じゃないと思うんですけどー?」 「シャマルさん…!僕にとって、これは難しい話なんですよ…!」 今回、僕は、出来る限り事なきを得て買い物を済ませたい。安全に、平和的にパンツを購入したいんだ。 となれば、僕の恋愛事情を全て把握しているシャマルさんはまずアウト。 この人が付いてきたら何がどうなるかまずわからない…。 そしてまた、僕の恋愛事情を全く把握していないシグナムさんもアウトだ。 前者と同様何が起きるか判らないし、何より絶対条件”恋心悟られ不可”がある。この条件がある限り難しい…。 僕ごときがヴォルケンの皆を消去法で選ぶなんてしたくはなかったけれど、ここは残された一人…、普段から良く遊び、 恋愛事情も多少把握しているヴィータちゃんに頼むのがベストだろう…。 「んー、どうでしょうかねぇ、さっきも言いましたけど、あの子はパンツに興味が…」 シャマルさんのそれは推論に過ぎません。それに、もしそうだとしても、大丈夫…、 「こちらには作戦があるんですよっ!まぁ見ていてくださいよっ。」 目下のヴィータちゃんはといえば、ソファに寝転がって雑誌を読んでいるようだ。 さっきのはやてちゃんとの会話も聞いていたと思うから、意外にすぐに受け入れてくれるやもしれない。 「ヴィ、ヴィータちゃん…!」 「私は行かねーぞ」 「…ふぇ?」 いきなり打ち砕かれた。しかしここで挫けはしないっ。ヴィータちゃん、僕には貴女がどうしても必要なのだからっ…! 「そんなこと言わずに行こうよ!今ならパンツの他にも、デパートでしか食べることの出来ない高価なアイスも付いて…!」 「この前はやてが買ってきたヤツがあるからいらねぇ……」 「そ、そんなぁ……」 「なぁお前さ、1ついいか?前から言っておきたかったことがあるんだけどさー」 99 :学生さんは名前がない:2009/07/17(金) 06 53 41 ID I5eIVTeD0 「好きな人を遠ざけるような選択っておかしくねーかな?私だったら喜んではやてと二人で買い物行くけどなー」 「ヴィータちゃん正論♪」 シャマルさんもヴィータちゃんの意見を後押しする。でもさ……、 「ヴィータちゃん…だからそれはね……」 わかってよ……、僕がおかしくなったら、迷惑に思うのははやてちゃんなんだ…。二人きりだから誰もツッコんでくれない。 そこには、萌え狂った僕と困惑するはやてちゃんしかいないんだ。ただパンツを買うってだけなのに…、 それだけのためにはやてちゃんを困らせたくはない…。だから僕は……、ぅぅう… 「よくわからないけど、そんなに3人で行きたいなら他をあたることだな。私はパスだ」 ああダメか…。ヴィータちゃんが完全に買い物3人目を拒絶してしまった。これで残るカードは2枚…。いや事実上1枚と 言えるか…。シグナムさん。僕は…貴女に全てを賭けます。 「おい、まだ準備していなかったのか。主はやてと買い物に行くのだろう?」 言っている傍からシグナムさんが話しかけてきてくれた。 「その話についてなんですが…、お話が……」 「む?ああ、そういえばな、お前がさっき言っていた雨の件だが。」 「はい…?」 「先ほど天気予報で梅雨明けが報告されていた。安心して買い物にいけるだろう。それで、話とはなんだ?」 「え、あ、はい…。あの……、出来ればなのですけど、、買い物に一緒についてきて貰えませんかね…?」 「何故だ?」 理由を聞いてくるのは当然か…。たかがパンツを買いに行くというだけで、大きい荷物を運ぶというわけでもないし、 本来人手は必要ないのだから…。けれどちゃんと理由はある。二人きりでおかしくなるという理由の他にあるんだ。 「あの…、僕だけでは…はやて、さんを…守りきれないから…、街中は怖いですし…、だからシグナムさんに一緒にって…」 「そうか。なるほどな」 シグナムさんは腕組みをしながら納得の表情だ。正直、少し悔しい…。でも、はやてちゃんを守るため、 困らせないため、あらゆる面を考えての最善の手なのだ。シグナムさん、どうかお願いします……。 「そういうことならいいだろう。私も付いていこう」 ホントですか!?やった…やったぞ……なんとか3人目を確保することが出来た…。ああ、よかった…よかったよぉ…… 「ねぇシグナムぅ、貴女本当に大丈夫?パンツを買いに行くのよ?当然、貴女のも購入することになるのよ♪」 「なっ……!?」 シャマルさんに告げ口に、シグナムさんには珍しく少し戸惑っているようだった。 「パンツの1枚や2枚、なんだというのだっ!?私は…別に……主はやてを守りたい…だけだっ…」 不安要素はいくつか抱えた状態だけど、僕とはやてちゃんとシグナムさんでパンツを買いに行くことになったんだ。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
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いきなりは変われない(後編) ◆HlLdWe.oBM 「だ、大丈夫ですか、こなた」 「うん、なんとか無事だよ。でもいったい何があったの?」 「リインにもよく分からないです。咄嗟に防御魔法を展開するだけで精一杯でしたから」 こなたとリインはお互いの無事を確認すると、周囲の様子を恐る恐る窺った。 まだ周囲には埃が立ち込めて様子は分からなかったが、辛うじて見えた近くの壁には縦横に亀裂が走っていた。 どうやらデュエルアカデミアの何処かで爆発か大きな衝撃があって建物に亀裂が入ったようだ。 つまり長居をすれば施設の倒壊に巻き込まれる可能性が高いという事になる。 「そうだ、ルルーシュとレイは!?」 「すいません。レイは離れていたので防御魔法の範囲外でした」 リインは己の未熟さを恥じるかのように弱々しい声で事実を述べた。 その答えを聞いた時、こなたの脳裏に最悪の状況が浮かんだ。 建物に亀裂が走って天井や壁が脆くなった挙句に瓦礫として降り注ぐ様が。 そしてその下にいたレイは為す術もなく潰れて、血だまりの中に肉片が――。 「そ、そんな……じゃあレイは……」 「……でも、どうやらあまり瓦礫は落ちていないみたいです。だから無事だと思いますよ」 「あ、そう言われてみれば……」 確かにリインの言う通りだった。 先程より少し埃が薄らいだために周囲の様子が分かるようになっていた。 一見すると縦横に亀裂が走って今にも崩れそうだが、意外だが今の時点で壊れている壁や天井は微々たるものだ。 周囲の様子を確認すると、こなたはほっと胸を撫で下ろした。 少なくともレイが死ぬという最悪の結果は見なくて済みそうだ。 そうなるともう一人の行方が気になってくる。 「ところでルルーシュは……」 「ルルーシュならこなたの足元で寝ているですよ」 周囲をキョロキョロと見渡していたこなたにリインが声をかけた。 どうやら周囲ばかり見ていたせいで足元を見落としていたみたいだ。 まさしく灯台もと暗し。 「あ、いたいた。ルルーシュ、もう大丈夫だ――」 ――ぴちゃ。 「へ?」 こなたは不思議に思った。 ルルーシュに目を向けるために少し足を動かした瞬間、水溜まりを踏むような音が聞こえたのだ。 だが周囲を見ても水道管が破裂している気配などない。 それならこの水溜まりはいったい――。 「こなた! それ血だまりです!!」 「え、ええ!? そんな、ルルーシュ! ルルーシュ! ねえ、起きてよ!!」 リインに遅れること数秒、ようやくこなたにも状況が分かってきた。 ルルーシュは真っ赤な血だまりの中に倒れていたのだ。 原因は右腕の傷口。 そこがさっきの衝撃で開いてしまったのだ。 その場しのぎの止血と応急処置だけで放置していた事が裏目に出た。 ずっと傷口を防ぐのに使っていたスバルの鉢巻きは長時間の使用で緩んでいたのだ。 「こなた、ルルーシュの右腕は化膿もしていたです! このままの状態が続けば命が危ないです!」 「それって結構ヤバいんじゃ。早く何とかしないと!」 「早く正規の治療を施さないと……ヒーリングだけではもう焼け石に水です!!」 リインの悲痛な叫びを聞いている内にこなたは今の状況に至る発端を思い出していた。 そもそもの始まりはこなたとレイが合流してルルーシュの元に戻っている最中に遡る。 途中いくつか今後について話しながら移動していると、廊下で倒れているルルーシュを発見したのだ。 エントランスで待っているはずのルルーシュがなぜ廊下で倒れていたのか不思議だったが、それ以上に大きな問題が判明した。 ルルーシュの右腕の傷口が化膿して発熱していたのだ。 おそらく応急処置だけでは細菌の侵入を食い止める事ができなかったのだろう。 しかも失血によって体力も相当弱っていたはずだ。 さらに右腕の傷口に巻かれたスバルの鉢巻きは未だに替えないまま今に至っている。 それでは細菌の良い温床になるばかり。 今までルルーシュはいくつもの緊張の中に身を置いていたので発熱の前兆を疲労だと判断して無視してきた。 それはただスバルを守りたいがため。 そのために多少の不調には敢えて目を瞑ってきたのだ。 だがそれが反ってルルーシュ自身の状態を悪化させる事となっていた。 実際は表面上の変化はないように見えたが、その実ルルーシュの身体は限界に達していたのだ。 ルルーシュの容態に気付いたリインが急いでヒーリングを施したが、リインの力もここでは制限されていて状態は芳しくなかった。 だが必死の治療が功を奏したのか、しばらくするとルルーシュは目を覚ましてくれた。 まだ焦点が定まらないのか目が虚ろだったが、意識を取り戻した時はほっとした。 しかしその後に事件は起こった。 なぜか目覚めたルルーシュはいきなり左目に紅い不死鳥の紋を浮かび上がらせたのだ。 それは絶対遵守の力であるギアスが発動する前兆だ。 なぜこのタイミングで、誰に、どんな目的で。 こなたとリインはその一瞬にいくつもの疑問が湧いた。 だからどうしていいか分からず結局ギアスの発動を止めさせる事ができなかった。 まさか化膿による発熱の影響で冷静な判断を逸しているなど思いもつかない事態であった。 だが結果的に『俺に従え』というレイへのギアスは不発に終わった。 あの瞬間に起こった爆発の影響で落ちてきた瓦礫によって。 それは今になってそれほど大きくなかったと判明したが、ギアスを遮るのには十分なものであった。 そして結果的にレイにギアスは掛けられなかったが、ギアスの発動自体は成立していた。 だから当然ギアスに掛けられた制限でルルーシュには多大な疲労が残る事になった。 それは辛うじて意識を取り戻していたルルーシュを再び昏倒させるのに十分だった。 しかも意識を失う際に無意識のうちに倒れる身体を支えようと腕を出したのが決定的だった。 身体の支えとして出した右腕は既になく、傷口をもろに床に直撃させる結果となった。 その衝撃で止血用の鉢巻きが取れて傷口が開くなど、まさに泣きっ面に蜂の状態だ。 これらの原因の一端がルルーシュにもあるとはいえ自業自得にはあまりにも不幸な出来事であった。 だがそもそもこなたとリインはルルーシュの行動の理由など知る由もない。 二人にとってはいきなり重症のルルーシュがレイにギアスを掛けようとした事ぐらいしか分かっていなかった。 だから二人は知らなかった。 「ルルーシュ……あなたのせいで十代様はアアァァァァ!!!」 ルルーシュが目撃した光景を。 レイが拳銃の銃口をルルーシュに向けている様子を。 ▼ ▼ ▼ もう迷わない。 ▼ ▼ ▼ きっかけは些細な会話だった。 リインが話していた時空管理局の救援に関する会話。 その中に出てきた一つの事実が他の内容を吹き飛ばすほどレイには衝撃的だった。 それは『パラレルワールドから参加者を連れてくるごとに時空管理局に発見される可能性が高い』という内容だ。 つまりプレシアにとってはパラレルワールドから参加者を連れてくる事は何らかのリスクを負う事になる。 しかも本来なら一度で済む作業を二度三度に分けるので手間もかかる。 ではなぜプレシアはリスクを負って手間をかけてまでそのような事をするのか。 それはもちろん参加者の間で誤解を生じさせて殺し合いを誘発してデスゲームを円滑に進めさせるためだろう。 だが参加者全員にそれが当てはまるだろうか。 確かに別世界の影響で知り合いだと思っていた者が自分の事を知らない、あるいは時間が違うせいで味方だと思っていた者が敵になる。 まさに誤解による殺し合いの促進だ。 だがこれによって殺し合いに影響を及ぼす者は何らかの力のある者に限られる。 例えばもし自分と十代の間に誤解が生じたところで大して力のない二人など他の参加者から見ればどうでもいい存在でしかない。 一応カードの扱いに一日の長があるが、そのような力はカードがなければ何の役にも立たない。 つまり自分達のような何の力もない一般人は誤解を生じさせてもあまり意味がない。 パラレルワールドから手間をかけてリスクを冒して連れてくるだけのメリットが無いのだ。 この結論に至った時、レイは絶望した。 先程の放送で呼ばれた遊城十代がレイの世界の十代で間違いないという事になるからだ。 本当はこのような結論など否定したかった。 だがどう考えても否定できる理由など見つからなかった。 だからレイは一人静かに恨んだ。 十代を殺した者を。 そして――。 ――レイの行動を阻んだルルーシュを。 ここに来てからレイは実に半分以上の時間をこのデュエルアカデミアで過ごしている。 その原因はルルーシュだ。 ルルーシュの疑いの目を警戒するあまり行動は慎重にせざるを得なくなり、結局のうのうと時間を浪費するだけだった。 確かにいくつか収入はあったが、それよりももっと会場を巡って十代のために何かできたはずだ。 ルルーシュさえいなければスバルやこなたを上手く言いくるめて別行動できたかもしれない。 だからこそルルーシュの存在が許せなかった。 だがいくら憎んでもレイの手持ちには人を殺せるような道具はない。 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は使用に関して不確定要素がありすぎる。 唯一確実な武器である拳銃はルルーシュに取られたままだ。 だからレイは一度生まれた負の感情を持て余していた。 だが好機は意外にもすぐ訪れた。 エントランスに向かう廊下の途中でルルーシュが倒れていたのだ。 しかも右腕の傷が化膿して発熱を引き起こすという重症になっていた。 すぐさまこなたとリインはルルーシュの応急処置に取り掛かり、レイはルルーシュやこなたの荷物を預かる事になった。 レイが治療に参加しないのはレイより年上のこなたの方が治療の助けには向いているからだ。 だから治療の邪魔になるようなデイパックや銃器を預かる役はレイになったのだ。 つまり図らずともレイの手に人殺しの道具が舞い込んできたのだ。 レイの目の前ではこなたとリインが床に救急箱やシーツなどを広げて必死の治療に当たっている。 もちろん二人が意識を向けているのは重症のルルーシュであって、仲間だと思っているレイは意識の外になる。 だからルルーシュから取り戻した銃を構えても何の反応もなかった。 もう照準は合わせたので後は引き金を引くだけだった。 だがいざ引き金を引こうとすると指が動いてくれなかった。 本当にこれでいいのか。 もしかして自分は間違っているんじゃないか。 こんな事をして結果的に何になるのか。 そんな疑問がレイの胸中に渦巻いた。 そもそもレイは十代を守るために危険人物を殺そうと決意したが、今に至るまで誰も殺していない。 しかも手違いで無害なフェイトを殺してしまったと思った時は一瞬たじろぎさえしていた。 誰かを殺す決意はしたが、まだ誰かを殺す覚悟は固まってはいなかったのだ。 だから銃口をルルーシュに向けたまでは良かったが、そのままの状態から一歩進む事ができなかった。 だが皮肉にもその最後の一歩を踏み出す一押しになったのはルルーシュであった。 確かにレイはルルーシュを撃とうとしたが、まだ覚悟は定まっていなかった。 だからルルーシュと目が合った時、自分の行動がばれたと思って身体が震えたのだ。 その時レイはもう全て打ち明けてしまおうかと思うぐらい実際には精神的に追い詰められていた。 しかしそんなレイにルルーシュは躊躇う事なくギアスを掛けようとした。 確かに銃を撃とうとしたレイに非がある。 だがただ銃口を向けただけでギアスを掛けるとは如何なものか。 こちらはまだ撃つ覚悟さえ固まっていなかったというのに。 しかもギアスの内容は『俺に従え』――レイを完全に従順させるものだ。 これがまだ『銃を捨てろ』や『撃つな』ならまだ納得がいく。 だが『俺に従え』などまるでレイがルルーシュの道具であるかのような言い草だ。 そしてレイは悟ったのだ――ルルーシュにとって自分は使い捨ての効く道具のような存在だと。 それに気付いた時、頭のどこかで何かが吹っ切れた気がした。 そして激しい怒りと憎しみが湧きあがってきた。 自分はこんな奴のために十代様を守る時間を浪費してしまったのかと。 だから二度目に銃を構えた時、もうそこに躊躇はなかった。 だがこの時は激情に突き動かされて声を上げたせいでこなたとリインに気付かれて失敗してしまった。 そして銃の反動に驚いている隙を突かれて、あまつさえ3人の逃亡を許してしまった。 一応逃げていった方角は北の裏口の方なのでどの方向へ行ったのかはだいたい分かる。 ここも自分が調べた範囲では目ぼしい物はなかったから長居する必要はない。 「ルルーシュ、あなたを殺して、次に十代様を殺した奴も殺す。そして――」 その時にはもう全てが終わるだろう。 「――私も死ぬ。ごめんなさい、十代様」 どうせ元の世界に十代はいない。 死者蘇生の可能性など先程考えた通り、期待するだけ無駄だ。 それなら生きているより死んだ方がいい。 もしかしたら天国という場所があって十代と再会できるかもしれない。 「……私――いやボクはもう恋する乙女なんかじゃない」 そこには恋する乙女の姿はなかった。 そこにあるのは悲しい復讐者の姿だけ。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 デュエルアカデミア裏口付近】 【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康、銃の反動で腕が少し痺れている、自暴自棄 【装備】SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、 【道具】支給品一式×4、リインフォースⅡのお出かけバッグ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX、情報交換のまとめメモ、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D s ―LYRICAL KING―、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、洞爺湖@なの魂、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、シーツ数枚 【思考】 基本:目的(ルルーシュと十代を殺した者を殺す)を果たしてから死ぬ。 1.ルルーシュを追いかけて殺す。 2.十代を殺した者を殺す。 3.レッド・デーモンズ・ドラゴン……使えるかな? 4.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。 【備考】 ※フェイト(A s)が過去から来たフェイトだと思っています ※フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています(スバル達には「自分の世界のフェイトは敵に洗脳されているかもしれない」と説明しました)。 ※デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。 ※カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。 ※レッド・デーモンズ・ドラゴンが未来の世界のカードだと考えています(シンクロ召喚の方法がわかっていません、チューナーとチューナー以外のモンスターが必要という事は把握済みですがレベルの事はわかっていません)。 ※正しい召喚手順を踏まなければレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚出来ないかどうかは不明です。 ※レイの調べた範囲でデュエルアカデミアに目ぼしいものはありませんでした。 ※死んだ十代は自分と同じ世界の十代で間違いないと思っています。 ※かなり破滅的になっているので周りの話をあまり聞かない可能性が高いです。 ▼ ▼ ▼ 生き延びたいなら躊躇ってはいけない。 ▼ ▼ ▼ 「ダメですこなた! やっぱりさっきの衝撃で傷口が開いてヒーリングだけじゃ手に負えないです!!」 背中からリインの必死の訴えに危機感を募らせながらこなたは決死の逃避行に挑んでいた。 なんとか裏口からデュエルアカデミアを抜けて現在は先程確認した煙の方に向かっている。 大した理由はない、ただ咄嗟にその方角が思いついただけだ。 本当はスバルと合流したかったが、あの時デュエルアカデミアを襲った衝撃はエントランスの方からだった。 だからそこも安全とは言えない。 しかも今迂闊に戻ればレイと鉢合わせになる可能性もあるのだ。 今の状況は最悪だ。 まず近くに頼れる存在がリインしかいない上に、そのリインも治療で手が離せない状態。 ルルーシュは意識を失っていて右腕の怪我が悪化して急を要する事態。 そしてこなたはその重症のルルーシュを背負って懸命に走っている最中。 時々背丈が違い過ぎるから背負うのは大変だと泣き言を言いたくなるが、そんな暇などありはしない。 今は一瞬たりとも気を抜けない。 なぜなら気を抜けばたちまち背後から追いかけてくるレイに殺されるかもしれないからだ。 あの時なぜレイがいきなり発砲してきたのかは分からない。 だがレイの顔は相当追い詰められたものだった。 きっと何か深い事情があった事だけはなんとなく分かった。 おそらく今のレイに何を言っても聞く耳を持たないに違いない。 だから逃亡という選択をしたのだ。 最初の銃弾とその後の逃亡はリインのおかげで何とか上手くいった。 だがそうそう何度も上手い事いくわけがない。 今のこなたはデイパックさえ無い状態なのだ。 まさに頼れるのは己の身一つのみ。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 北西部】 【泉こなた@なの☆すた】 【状態】健康、ルルーシュを背負っている 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本:かがみん達と共に家族の元に帰るため、自分の出来る事をする。 1.とにかく逃げる(一応煙の方を目指して)。 2.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果について報告。 3.リイン、レイ、スバルが心配。 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。 5.後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。 6.かがみん達……大丈夫だよね? 7.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。 【備考】 ※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。 ※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。 ※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。 ※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。 ※この場所には様々なアニメやマンガなどに出てくるような世界の人物や物が集まっていると考えています。 ※地図に載っていない施設が存在する可能性があると考えています。 ※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】 【状態】左腕裂傷、右腕欠損(傷口化膿・再出血)、疲労極大、発熱による若干の錯綜、強い決意、深い悲しみ、気絶中 【装備】ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS 【道具】なし 【思考】 基本:守りたい者、守るべき者を全力で守り抜く。 1.レイは危険だ。 2.チンクが目覚めたら彼女と話をする。 3.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てもスバルにとって最善と判断した行動を取る(もしもの時は殺害も辞さない)。 4.ディエチやカレンの犠牲は絶対に無駄してはならない。 5.ギアスの制限を確かめたい。 6.戦力の確保及びプレシアの関係者の捜索、首輪の解析を行う。 7.C.C.、クアットロと合流したい。 8.ゲーム終了時にはプレシアに報復する。またその後でシャーリーに自らの命の決断を仰ぎ、それに従う。 9.左腕が刃の男(=ナイブズ)、赤いコートの男(=アーカード)、殺し合いに乗った頭の切れる参加者を警戒。 【備考】 ※プラント自立種にはギアスが効かない事が確認されました。 ※ギアスを使った際の疲労は命令の強さに比例すると考えています。同時にギアスが効かない参加者が他にもいると考えています。 ※こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。 ※「左腕が刃の男」が既に死亡したナイブズである事に気付いていません。 ※ここにいるスバルを“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。 ※レッド・デーモンズ・ドラゴンは現状では使えない可能性が高いと考えています。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。ご褒美の話をどう捉えているかは後続の書き手さんにお任せします。 ※シャーリーが父の死を聞いた直後から来ている事に気付きました。また一緒にはいられないと思っています。 【リインフォースⅡ:思考】 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。 1.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。 2.ルルーシュの治療に専念する。 3.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果、こなたと話した他の施設や隠し施設の事について報告。 【備考】 ※リインフォースⅡの参戦時期は第四話ではやてと会話する前(つまり眠っている間)です。 ※自分の力が制限されている事に気付きました。 【チーム:黒の騎士団】 【共通思考】 基本:このゲームから脱出する。 1.デュエルアカデミア内部を調べる。 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。 4.それぞれの仲間と合流する。 【備考】 ※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。 ※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。 ※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は守りたいもの本文参照。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。 ※チーム内で以下の共通見解が生まれました。 要救助者:シャーリー、ヴィヴィオ、万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、チンク、C.C.、(フェイト及びクアットロには注意の必要あり) 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ) 以上の見解がそれぞれの名簿に、各々が分かるような形で書き込まれています。 ▼ ▼ ▼ どんな事をしても私は生き残ってみせる。 ▼ ▼ ▼ そこには少し前までは立派なエントランスがあったはずだ。 だが今ではその面影は見る影もなく廃墟と呼ぶのが相応しい状態になっていた。 まだ爆煙が晴れていないので一部しか見えていないが、全貌も推して知るべしというところだろう。 そんな光景を見てもかがみは何も思わなかった。 ただ自分が行った成果を他人のような目で見るだけだ。 最初かがみはスバルが言っている事が信じられなかった。 だがバクラに確認を取ったところ、それが真実であると知った。 つまり自分とこなたは別々の世界から連れて来られたという事実を認めるという事だ。 またバクラになぜこの事を黙っていたかと聞くと、宿主つまりかがみにこれ以上心労を掛けたくなかったと答えた。 その心意気は嬉しかったが、本音を言うともっと早く言ってほしかった。 実はバクラの本心は別にある。 本当はキャロと出会った時のかがみの反応が心配だったために言わなかったのだが、この際仕方なかった。 とりあえずいざという時は時間を稼いで精神を乗っ取って解決しようと思っている。 そしてかがみはなのはがあのような反応を取ってもおかしくないという事に行き着いた――だが、それだけだ。 世界が違おうと、時間が違おうと、かがみの身に降りかかった出来事に変化はない。 エリオが死んだのも。 クワガタの怪人に襲われたのも。 ピンクの髪の女侍を殺したのも。 片翼の剣士に死にそうな目に遭わされたのも。 Lに監禁されたのも。 モンスターに追いかけられたのも。 万丈目にカードデッキを押しつけられたのも。 カードデッキを破壊されてモンスターに襲われたのも。 全て世界や時間の違いなどと関係のないことばかりだ。 結局のところ自分の不幸の原因に変化はない。 この事実を知ったからと言ってかがみの方針が変わる事などないのだ。 むしろ逆に踏ん切りが付いた。 なぜならここにいるこなたは自分の世界のこなたではない。 つまり優勝して元の世界に戻ればこなたは変わらずそこにいるのだ。 そうなるとこなたが別世界ならつかさも別世界だろう。 かがみは根拠もなくそう思っていた。 もうこなたとつかさを気に掛ける必要はないのだ。 だが可能なら自分の手で殺すのは避けたいというのが本心ではある。 つまりもう迷う事などないのだ。 だからこその選択、だからこその行動だった。 現状かがみの手持ちの武器で一番使えそうなのは王蛇のカードデッキだ。 だがそれにはいくつか制約があり、とりわけモンスターの暴走を止める餌の確保は急務だった。 だからかがみは餌としてスバルを選んだのだ。 こちらを警戒していないその隙に行動を起こせばいけると思ったのだ。 結果的にそれは失敗したが、代わりの餌は補充できたので結果オーライだった。 だがバクラの進言もあってこの際に殺しまおうと考え直して、外からEx-stでの砲撃を敢行した。 バクラがこのような誘導をかけたのはかがみに殺人を重ねさせて下手に説得されない事を狙ったからだ。 それに先程喰われた眼帯女が万丈目を襲った奴だと気付いた事も一因であった。 万が一でも眼帯女からの情報で自分の存在に辿り着けば厄介だからだ。 「このEx-stって使いどころ微妙ね……あ、これ弾の補充ってどうするの?」 『さすがに俺もそれは知らねえぜ。またあとで考えるか』 「そうね」 『ああ、それよりも……』 「ん?」 『気を付けろ、あの青髪まだ死んでないぞ』 「まだ、生きているんだ」 バクラの言う通りスバルは生きていた。 爆煙が晴れてエントランスの全貌が明らかになって初めてスバルが少し離れた場所に倒れている事に気付いた。 内心でこの隙にベノスネーカーを襲いに行かせれば良かったと思ったが、ベノスネーカーはあの一瞬で傷を負わされたらしい。 そのせいかスバルの服装が白の戦闘服っぽいものから茶色の制服に変わっていた。 『バリアジャケットが解けたのか? 何にせよ、チャンスだぜ』 「何か考えがあるの?」 『ああ、あの剣みたいなデバイスを今のうちに取り上げれば、後が楽になるぜ』 バクラはキャロと行動するうちに基本的な魔法の知識は身に付いていた。 だからスバルの姿の変貌を見た時にすぐにバリアジャケットが解けた事に気付いたのだ。 そしてまた魔導師にとってデバイスが必要な物である事も知っていたので今の内に奪取する事を提案した。 ざっと観察したところスバルのデバイスが剣だと盗賊王バクラの鋭い目は見抜いていた。 だがかがみはその意見に懐疑的だった。 「そんな上手い具合にいくわけ――」 『盗みのカードがあっただろ』 王蛇のカードデッキの中にあった「STEAL VENT」のカード。 確かにその盗みのカードなら首尾よくいきそうだ。 「じゃあ、さっさと済ませましょうか」 『ああ、俺と宿主でダブルライダーだな』 「それ、なんか意味違う気がするわよ」 かがみはバクラの軽口を適当に流しながらEx-stをデイパックに戻して、代わりに王蛇のデッキを制服のポケットから取り出した。 そして首に下げている千年リングにデッキを映した次の瞬間、かがみの腰にはライダーの象徴たるベルトが顕現していた。 「『変身!!』」 戯れで重ねてみた二人の声を同時にベルトにデッキが差し込まれる。 もうそこにいるのは柊かがみではない。 そこにいるのは戦う事を宿命づけられた戦士、仮面ライダー王蛇の姿であった。 そしてすぐさま左手に牙召杖ベノバイザーを、右手に「STEAL VENT」のカードを用意した。 (私は生き延びたい。誰だってそう思うわよ。だから私は間違っていない――) かがみはそう思いながら「STEAL VENT」を発動させた。 いや、そう思わずにはいられなかったのかもしれない。 異常な状況とはいえ少し前まで平和に日々を過ごしていた女子高校生が喜々として殺し合いに参加するなど普通なら考えにくい。 だが普通でなければ。 もしかしたらかがみは別々の世界や時間という免罪符の下で自分の行為を正当化しているのかもしれない。 本当のところは誰にも分からないが。 たとえ孤独でも命ある限り戦う、それがバトルロワイアルだろう。 「いったい、どうしてこんな事に……」 スバルは未だ状況が把握できていなかった。 紫の蛇が襲ってきた事も。 背後から放たれた直射系の砲撃魔法のようなものの事も。 かがみが紫のバリアジャケットのようなものを身に纏った事も。 頼みの綱のレヴァンティンがいきなり消えてかがみの手に現れた事も。 どれもスバルには分からない事ばかりであった。 だがこのままかがみを放っておけない事だけは分かった。 しかしスバルの状態は厳しいものであった。 チンクのデイパックは爆発のせいでバラバラになって中身があちこち散らばっている。 バリアジャケットの外装は爆発によるダメージを軽減するためにリアクティブパージして、アンダーも軽減できなかった衝撃で破損してしまった。 つまり今のスバルはバリアジャケット無しの上に、手元にあるのは爆発の最中掴んできた自分のデイパックだけ。 まさに頼れるのは己の身のみ。 それでもスバルは諦めようとはしなかった。 たとえどんな厳しい状況でも突破する、それがストライカーだろう。 ――そして静かに戦いの幕は上がろうとしていた。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 デュエルアカデミア エントランス跡前】 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】健康、肋骨数本骨折、3時間憑依不可(バクラ) 【装備】ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎 【道具】支給品一式×2、Ex-st@なのは×終わクロ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ランダム支給品(エリオ0~2)、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ) 【思考】 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。 2.スバルを殺した後で映画館に向かう。 3.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。 4.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。 【備考】 ※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。 ※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。 ※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。 ※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。 ※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。 ※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。 ※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。 ※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。 ※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間~1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。 ※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。 ※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。 【思考】 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。 1.かがみをサポート及び誘導して優勝に導く。 2.万丈目に対して……?(恨んではいない) 3.こなたに興味。 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。 【備考】 ※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。 ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。 ※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です。 ※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。 ※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、全身にダメージ小、若干の不安、軽い混乱 【装備】なし 【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照) 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。 1.かがみを止める。 2.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。 5.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。 6.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。 【備考】 ※質量兵器を使う事に不安を抱いています。 ※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。 ※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。 ※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。 ※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いています。 でもそれを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。 ※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ▼ ▼ ▼ 時として人は個人の思惑が錯綜する事で思わぬ結果を生む事がある。 またその影響で誤った道を進む者が現れたとしても責める事は出来ない。 なぜならそれを選び取ったのは他ならぬその者自身なのだから。 そして往々として人はそれが正しいものであると信じこもうとする。 だからありきたりな説得程度では戻る事など不可能だ。 坂を転がり始めた球が止まれないように。 いきなりは変われない。 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】 【全体備考】 ※デュエルアカデミアはもう一度強い衝撃を与えれば倒壊する可能性が高いです。 ※チンクが持っていたデイパックと支給品一式(共に高確率で使用不能)は砲撃の影響でバラバラになりました。 ※翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA sは完食しました。 ※チンクの死体はバニースーツとシェルコートと一緒にベノスネーカーに喰われました。 ※スバルのはちまきと救急箱は一連の騒ぎの中で紛失・使用不能となりました。 ※ギアスの持続時間は2時間でした。 ※以下のものが【G-7 デュエルアカデミア エントランス跡付近】に散らばっています。 料理セット@オリジナル、被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(フェイト(StS)、ナイブズ)、大剣・大百足(柄だけ)@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、ルルーシュの右腕 Back いきなりは変われない(前編) 時系列順で読む Next Nightmare of Shirley(前編) 投下順で読む Next Nightmare of Shirley(前編) ルルーシュ・ランペルージ Next Nightmare of Shirley(前編) スバル・ナカジマ Next 想いだけでも/力だけでも チンク GAME OVER 泉こなた Next Nightmare of Shirley(前編) 早乙女レイ Next Nightmare of Shirley(前編) 柊かがみ Next 想いだけでも/力だけでも